第89号 2005・11・30

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。今日は、89号です。

今日から、代理の中でも特に難しい部分である表見代理の説明に入っていきます。

表見代理といわれても全然意味がわからないと思いますが、少しずつ慣れていってください。

それから、表見代理の考え方を理解しておくことは非常に重要で、これをマスターすることができたら他にも応用ができます。

頑張って理解してくださいね。

第109条(代理権授与の表示による表見代理)

第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内おいてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

■■ 解説 ■■

さて、表見代理を理解するには、代理について理解していることが必要です。

代理とは、本人が代理人に一定の代理権を与えて、代理人が相手方と法律行為をします。

そして、代理人がした法律行為は本人に帰属するというものでしたよね。

これがわからないという方は、バックナンバーを見てください。

99条あたりから読まれると理解することができると思います。

さて、この代理ですが、成立するための要件を覚えているでしょうか?

〜代理の要件〜

1、本人のためにすることを示すこと(顕名)
2、代理人の法律行為が有効に成立すること
3、代理権の範囲内にあること

この3つが代理が成立するための要件でした。

それで、表見代理と言うのは、この3つめの要件、つまり代理権がないような場合に問題になります。

3の要件が欠けると代理行為は無効になり、その法律行為の効果は本人に帰属しなくなります。

これを無権代理といいます。

本人からすれば、代理権もない人が勝手にした法律行為が自分に帰属するとなったら、たまったものじゃないですよね。

ですから、代理権がないような行為は無効になるのです。

でも、相手方が代理権があると信じるような事情があった場合には、全て無効となるのでは、今度は相手方がかわいそうですよね。

代理権があると思って、代理人のように見える人と法律行為をしたのに常に無効となればこれは相手方があまりにもかわいそうです。

難しくいえば取引安全を害するということになるわけです。

そこで、民法は相手方が代理権が存在すると信じるような、特段の事情がある場合に、代理権があったものとして法律行為を有効にする制度を定めました。

これが表見代理というものです。

つまり、表見代理は、代理権がないから本来なら無効になる法律行為を、本人の犠牲のもとに相手方を保護し、取引安全を保護するための制度なのです。

そして、民法は表見代理として、3つの類型を定めました。

1、授権表示による表見代理(109条)
2、権限踰越の表見代理(110条)
3、代理権消滅後の表見代理(112条)

この3つのパターンを一つずつ紹介していきます。

ただ、少し長くなりましたので、次回からの109条の授権表示による表見代理について説明していきたいと思います。

時間のある方は、バックナンバーを見て、99条の代理のあたりを読んでおいてくださいね。

■■ 豆知識 ■■

さきほどの、2つめの類型である「踰越」というのは「ゆえつ」と読みます。

広辞苑によると「のりこえる」という意味だそうです。

つまり、代理権の範囲を超えた代理行為がなされた場合の規定です。

■■ 編集後記 ■■

おそらく普通のパソコンだと、「踰越」という字は変換しても出てこないと思います。

私は、よくパソコンで法律の論文やメルマガを書くので、法律用語の変換ソフトを使っています。

ほんとに法律用語って難しいし、漢字も変換しても出てこないことが多いんですよね。

法律の文書をよく書くという方は、有斐閣の法律法学用語変換辞書というソフトがおすすめです。

6000円くらいするので、少し高いのですが、法律を勉強するのであれば、買っておいて損はないと思います。

一度買えばずっと使えますしね。

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