第74号 2005・10・7
■■ はじめに ■■
みなさん、おはようございます。
今日は、96条の解説です。詐欺や強迫をされて、契約をした場合にどうなるのかということを規定した条文です。
これも、いろいろな問題があるのですが、比較的わかりやすいと思いますので、基本的なことだけは理解しておいてください。
それと、かなり難しい条文に入ってきているので、みなさんがどれくらい理解できているかアンケートを取りたいを思います。
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よろしくお願いします。
▼▼▼ 第96条(詐欺又は強迫) ▼▼▼
1項
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2項
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3項
前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。
■■ 解説 ■■
この96条なのですが、実は、非常に重要な判例があります。
そして、判例とは違う理論構成をする極めて有力な学説もあります。
今までも何回か、判例と学説という言葉を使ってきましたが、簡単に説明すると、判例というのは、実際の裁判で裁判官が書いた判決文の立場です。
つまり、世の中は判例を中心に回っているわけですから、判例が重要であることは言うまでもありません。
これに対して学説というのは、大学の教授が唱えている説です。
法律学は学問ですので、大学の教授たちが日々研究をして、いろいろな理論を発表するわけです。
そして、判例に賛成する学説もあれば、判例に反対する学説もあります。
判例より、説得的な学説もたくさんあります。簡単に説明するとこういうわけですが、この論点に関しては、判例と学説が大激突します。
判例の考え方と有力な学説の考え方が真っ向から衝突します。
この話は、判例を紹介するもう一つのメルマガである、「知ってて得する法律知識!実際の判例から解説!」で次回紹介したいと思います。
さて、まず1項ですが、これはすごく簡単です。
例えば、甲さんが、乙さんに対して、「オレの持っている土地は、来年、近くに新幹線が開通するから、価格が倍になる。今のうちに買っておいたら得するぞ。」と嘘を言ったとします。
それを信じて、乙さんは、その土地を買ったとします。
でも、実際は新幹線なんて開通しなかったというような場合です。
このように詐欺によって、意思表示をして契約をした場合には、その契約を取り消すことができます。
強迫の場合も同じです。
強迫されて意思表示をした契約は取り消すことができます。
これは、乙さんのように騙された人や強迫された人を保護するための規定です。
ただ、注意してほしいのは、3項です。
3項は、「前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。」としています。
例えば、さきほどの事例で、甲さんが、乙さんに土地を売りましたよね。
その後すぐに、乙さんはさらに、丙さんに土地を売ったとします。
その後、乙さんは自分が騙されたということに気づいたので、96条1項によって契約を取り消そうと思いました。
でも、その取消しは善意の第三者である丙さんには対抗できないのです。
どういうことかというと、甲さんと乙さんの土地の売買契約が取り消されれば、甲さんの土地は、乙さんに売っていないということになりますよね。
ということは、本件の土地の所有者はいまだ甲さんということになります。
つまり、乙さんは、本件の土地に関して、何ら権利を有していないわけです。
ということは、そのような乙さんから本件の土地を丙さんが買ったとしても、丙さんは土地を取得することなんてできないわけです。
当然ですよね。例えば、みなさんが持っている車を、私が、誰かに勝手に売ったとします。
だからといって、みなさんの車が私が売った相手の人の物になるわけがないですよね。
それと同じことです。
私が、みなさんの車に関して所有権を持っていないのと同様に、乙さんも取り消せば、土地に関しては何らの権利も持っていないことになるわけです。
でも、丙さんからすれば、「オレはそんなこと知らん。」となります。
甲さんが、乙さんに対して詐欺をしていたなんて、丙さんからすれば知りようのないことですよね。
そこで、このような丙さんを保護するための規定が96条3項なのです。
つまり、乙さんは甲さんに詐欺されたことを理由とする取消しを丙さんに対抗することができないのです。
ということは、無事に丙さんは本件土地の所有権を取得することができます。
反対に、丙さんが悪意の場合。
つまり、丙さんが、甲さんが詐欺していたことを知っていたような場合は、乙さんは取消しを丙さんに対抗することができます。
つまり、丙さんは本件土地を取得することができなくなります。
丙さんは知っていたんだったら買うなよ!ということです。
96条3項が、「善意の第三者に対抗することができない」として、善意の者に限定しているのはこういうことです。
■■ 豆知識 ■■
「強迫」の字に注目してください。
民法では、「脅迫」という字を使わないんですね。
刑法では、脅迫罪というのがありますが、その「脅迫」とは少し違う字を使っています。
民法と刑法を混同してしまう人が多いのですが、民法は民事事件で、刑法は刑事事件なので全く別物なんですね。
ですから、民事裁判で、強迫による取消しが認められても、刑事事件で必ずしも脅迫罪が成立するとは限りませんので、注意してくださいね。
■■ 編集後記 ■■
93条あたりから、すごく説明文が長くなってきています。
96条に関してはまだまだ説明することがありますので、明日続きを説明します。
2項に関しては全く触れていませんしね。
ちなみに、2項を読んでどういうことかということを一度考えてみてください。
条文だけを読んで、意味を理解する力というのはすごく大事ですので。
私は、勉強を始めた頃、2項の意味がいくら考えてもわからず、先生に教えてもらいに行った記憶があります。
ということで続きはまた明日です。
追伸
今日、ドラゴン桜を買ってきました。
私は流行物に全く興味がないのですが、ドラゴン桜はおもしろそうなので、買ってしまいました。
読んだ感想ですが、めちゃくちゃ面白かったです。
面白かったというより、ズバリ的を得ているなという感じがしました。
特に、5巻くらいまでが面白かったです。
それ以降はただの漫画というか、私にはどうでもいい内容でした。
でも、せっかくですから全部読むつもりですけどね。
どこが良かったかなどは、また今度。
発行:株式会社シグマデザイン
http://www.sigmadesign.co.jp/ja/
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