第71号 2005・10・4
■■ はじめに ■■
みなさん、おはようございます。今日は、93条です。今日から、いよいよ民法の難しさが分かっていただけると思います。
今まで、「法律ってこんなもんか。」「そんなに大したことないな。」と思っていた方も今日からは、少し気合を入れて読んでくださいね。
▼▼▼ 第93条(心裡留保) ▼▼▼
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
■■ 解説 ■■
おそらく、この条文を読んでも何のことかさっぱりわからないと思います。
まず、93条は心裡留保というのですが、「しんりりゅうほ」と読みます。
どういう条文かというのを具体例を挙げて説明します。
木村さんという人が、友達の加藤さんに、売る気もないのに、冗談で、「オレのベンツもういらないから、100円でお前に売ってやるよ。」と言いました。
そして、加藤さんは、冗談で言っているとわかりながらも、「マジで!じゃあ、買うよ。」と言いました。
この場合、売買契約は成立するのでしょうか。
このような場面を解決するために、使われるのがこの93条です。
どういうことかというと、まず、本文の「表意者」というのは、この場合、木村さんです。
そして、木村さんは、自分はベンツなんて売る気がないのに、あえて100円で売るなんて言っているわけです。
つまり、表意者である木村さんは、自分が言っていることが真意ではないことを知って、ベンツを100円で売るという意思表示をしているわけです。
こんな場合でも、売買契約が成立すると、木村さんはかわいそうだと思いますよね。
でも、木村さんは、自分では売る気がないのに、あえてそんな嘘を言っているわけです。
こんな木村さんは保護する必要がないですよね。
どちらかといえば、嘘を言う木村さんのような人より、相手方の加藤さんを保護すべきです。
ですから、93条本文は、このような場合でも契約は成立すると規定しているのです。
「効力を妨げられない」と書いてあります。つまり、売買契約の効力は有効であり、契約は成立するということになります。
でも、本件では、相手方の加藤さんは、木村さんとは昔からの友達で、木村さんが嘘つきだということを知っていたわけです。
あいつは冗談で、ベンツを売ると言っているということを知っているわけです。
となると、今度は、加藤さんよりも、木村さんを保護すべきだということになりますよね。
だって、加藤さんは、木村さんが嘘を言っているということを知っていたわけですから。
そこで、93条但書きは、このように相手方が表意者の真意を知っていたり、知らないけれども、知ることができただろうと考えられるような場合には、契約は無効になると規定しているのです。
結局、法律は公平を図るための制度なのです。
ですから、まず、売る気もないのにベンツを売ると言った場合。
そんなことを言う人より、相手方を保護すべきなので原則として契約は有効になります。
でも、相手が嘘を言っていることを知っていたりしたような場合には、今度は、その相手方を保護する必要がなくなるわけです。
ですから、そのような場合には、やっぱり契約は無効になるわけです。
これを本件について見てみましょう。
木村さんは、ベンツを売る気がないのに、あえて100円で売るというような事を言っている。
この時点では、93条本文で、契約は有効になるとも思えます。
しかし、加藤さんは、木村さんが売る気もないのに、言っているということを知っています。
ということは、93条但書が適用されて、やはり、契約は無効になります。
ということで、本件では、売買契約は無効ということになります。
■■ 豆知識 ■■
法律は、公平を図るための制度なのです。
つまり、どちらを勝たせるのが公平か、ということを考えることがとても重要なのです。
本件では、木村さんと加藤さん、どちらを勝たせるのが公平か、ということを考えながら、読んでくださいね。
それから今日の豆知識ですが、法律の世界では、勝たせるというようなことを「保護する」と言います。
「木村さんを勝たせるべきだろう。」ということを、「木村さんを保護すべきだろう。」というような言い方をします。
「保護する」という言葉に少しずつ慣れてきてくださいね。
■■ 編集後記 ■■
わかりやすく説明するのがほんとに難しいです。
今日の解説で、うまく伝わったかどうか・・・。
実は、93条は他にも関連する問題がたくさんあるのですが、全てを説明するのは無理なので、これくらいにしておきます。
また、どこかで機会があればそちらの方も説明したいと思います。
どうでしょうか。このメルマガを読んで、少しくらいは、勉強になっているのでしょうか。
このメルマガで、法律独特の言い方などに慣れていただくだけでも、すごく勉強になると思いますので、まず、法律になれるということを目標に頑張っていきましょう。
慣れてしまえば、これから、本格的に勉強をやるにしても、そうでないにしても、必ずどこかで役に立つはずです。
私も頑張りますので、みなさんも一緒に頑張りましょうね!!
発行:株式会社シグマデザイン
http://www.sigmadesign.co.jp/ja/
日本で実施されている資格を調べるには資格キングをご利用下さい。
なお、配信解除希望とのメールをいただくことがあるのですが当方では応じることができません。解除フォームよりご自身で解除していただきますようお願いいたします。
次の記事:>> 民法第94条(虚偽表示)|毎日3分民法解説メルマガ
【YouTube】独学応援!行政書士塾
YouTubeで行政書士試験対策講座を配信しています!ぜひチャンネル登録を!
管理人の著書
【行政書士試験の最短デジタル合格勉強法。iPadを活用した新時代の勉強法】Amazonで絶賛販売中!
メールマガジン登録
このサイトは、まぐまぐより発行している無料メルマガのバックナンバーです。最新号を早く読みたい場合は、無料メルマガの登録をお願いします。登録はこちらから。