第65号 2005・9・26
■■ はじめに ■■
みなさん、おはようございます。今日は、87条ですが、かなり重要な条文です。 できれば、覚えてしまって欲しいことがあります。 このメールをそのまま保存しておいてもらってもいいかと思いますが。 さて、それでは、さっそくはじめましょう。▼▼▼ 第87条(主物及び従物) ▼▼▼
1項
物の所有者が、その物の常用に供するため、自己の所有に属する他の物をこれに付属せしめたときは、その付属させた物を従物とする。
2項
従物は、主物の処分に従う。
■■ 解説 ■■
まず、主物と従物という言葉がよくわからないかと思いますので、具体例を挙げて説明したいと思います。
一番典型的なのが、日本刀の刀身と鞘です。刀身が主物で、鞘が従物ということになります。
日本刀を持っている甲さんが、乙さんに日本刀を売ったとします。
すると、何もいわなくても刀身も鞘も乙さんの物になります。
これが、2項ですね。
刀身という主物を処分すれば、当然に、従物たる鞘も処分したことになるわけです。
本来、刀身と鞘は別の物ですよね。
例えば、みなさんが車とバイクを持っていたとします。
そして、みなさんが誰かに車を売ったとします。
だからといって、バイクも売ったことにはならないですよね。
これは、当然のことです。
しかし、仮にバイクが車の従物だということになれば、87条2項が適用され、バイクも売ったことになってしまいます。
なぜ、別の物でありながら、従物という関係が認められれば、従物についても当然に処分したということになってしまうのでしょう。
これは、つまり87条がなぜ規定されたのかということです。
これを、法律の世界では、条文の趣旨といいます。
法律の勉強をするにおいて、なぜ、この条文があるのか。
つまり、この条文の趣旨は何なのかということを考えることは極めて重要です。
ですから、この87条2項の趣旨は余裕のある人は覚えてしまってください。
趣旨:2個の独立性を有する物の間に、主従結合関係が認められる場合には、同一の法律的運命に従わせることが、当事者の合理的意思に合致するし、社会経済上も望ましいから。
つまり、2つの趣旨があります。
一つは当事者の合理的意思に合致するから。
もう一つは、社会経済上望ましいから、です。
では、この2つの趣旨に、さきほどの2つの事例をあてはめてみましょう。
まず、刀身と鞘の場合です。
刀を買った場合、普通は鞘も当然もらえると思いますよね。
また、売った方も鞘だけは売らないつもりだったということは普通はありません。
ということは、当事者の合理的意思に合致します。
また、刀身だけもらっても危なくて仕方がありません。
また、刀と鞘はセットで初めて価値がありますよね。
つまり、鞘も買ったことにする方が社会経済上も望ましいということになります。
ですから、刀と鞘は主物と従物の関係にあるということになります。
したがって、87条2項が適用され、刀も鞘も売ったことになります。
次に、車とバイクの事例です。
これは、単純な話で、車を売ったからといって、バイクももらえると考える人なんて普通はいないし、売った人もバイクを売ったつもりなんてないわけです。
つまり、当事者の合理的意思に合致しないということになりますので、車とバイクは主物と従物の関係にないということになります。
したがって、87条2項は適用されず、バイクを売ったことになんてなりません。
87条は1項で、まず、従物というのがどういうものなのかを規定して、そして、従物にあたれば、2項が適用されるという関係になっています。
■■ 豆知識 ■■
さきほどの、趣旨から、従物とされるための要件が導かれます。
この要件も余裕のある方は覚えておいてください。
下の4つの要件をすべて満たせば、その物は従物となります。
反対に、一つでも欠ければ、その物は従物とはなりません。
ここで、簡単な論理トレーニングです。
先ほどの2つの事例を一度自分で、下の要件を全部満たすのか考えてみてください。
刀と鞘の事例であれば、満たすはずですし、車とバイクの事例であれば、少なくともどれか一つの要件を欠くはずです。
〜従物の要件〜
1、継続的に主物の効用を助けること
2、主物に付属すると認められる程度の場所的関係にあること
3、主物と同一の所有者に属すること
4、独立性を有すること
一度、自分で、さきほどの事例がこの要件を満たすのか検討してみてください。
また、満たさないので、あればどの要件を満たさないのかということまで考えてください。
この、思考作業を法律の世界では「あてはめ」といいます。
さきほどの、事例を要件にあてはめる、という言い方をよくします。
次回、簡単な解説をします。
■■ 編集後記 ■■
今日は、長くなってしまいました。とても3分で読める量ではありませんね。
そうはいっても、やっぱり大事な条文は解説も長くなってしまいます。
他にも言いたいことはあるのですが、すべてを説明するのは不可能なので、仕方がないかなと思っています。
できるだけ、優先順位をつけて、重要度の高いものをお伝えしていきたいと思います。
また、できるだけ、法律の思考方法になれてもらえるような、説明をしていきたいと思います。
これから少しずつ難しくなっていきますが、頑張りましょう!!!
発行:株式会社シグマデザイン
http://www.sigmadesign.co.jp/ja/
日本で実施されている資格を調べるには資格キングをご利用下さい。
なお、配信解除希望とのメールをいただくことがあるのですが当方では応じることができません。解除フォームよりご自身で解除していただきますようお願いいたします。
次の記事:>> 民法第88条(天然果実及び法定果実)|毎日3分民法解説メルマガ
【YouTube】独学応援!行政書士塾
YouTubeで行政書士試験対策講座を配信しています!ぜひチャンネル登録を!
管理人の著書
【行政書士試験の最短デジタル合格勉強法。iPadを活用した新時代の勉強法】Amazonで絶賛販売中!
メールマガジン登録
このサイトは、まぐまぐより発行している無料メルマガのバックナンバーです。最新号を早く読みたい場合は、無料メルマガの登録をお願いします。登録はこちらから。