第42号 2005・8・1

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。今日は第42号です。今日もはりきっていきましょう。

今日は、43条ですが、少し大事な条文です。

▼▼▼ 第43条(法人の能力) ▼▼▼

法人は、法令の規定に従い、定款又は寄附行為で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

■■ 解説 ■■

法人は、一定の目的のために組織され活動するものです。

ですから、法人の権利能力は無制限に認められるわけではなく、目的によって制限があるということを定めた条文です。

権利能力というのは、権利や義務の帰属主体たりうる法律上の資格をいいます。

つまり、法人が、法人の目的とは全く関係のないような行為をした場合は、その法律関係によって生じる権利や義務は当該法人に帰属しないことになります。

これが、人間(自然人)と法人の違いです。

しょせん、法人というのは、社会をうまくまわすために必要だから認められたにすぎないということです。

■■ 豆知識 ■■

さて、さきほど、この条文は法人の権利能力を制限したものである、と言いましたが、実は争いがあります。

通説は、さきほど説明したように、この43条は法人の権利能力を制限したものだ、と考えているのですが、有力な反対説に、43条は法人の行為能力を制限したものだ、と考える見解があります。

行為能力というのは、自ら単独で法律行為をなすことのできる能力をいいます。

権利能力と行為能力、似たような言葉ですが、全く別の概念なのです。

難しいので、ここから先は読み飛ばしていただいてもかまいません。

興味のある方のみ読んでみてください。

さきほど説明した、権利能力制限説と行為能力制限説ですが、どのような差が生じるのでしょうか。

例えば、ある法人が、目的と全く関係のない契約をしたとします。この場合、権利能力制限説によると、その契約の効果が、その法人に帰属することはありません。

しかし、行為能力制限説によると、その法人には、行為能力がないだけで、権利能力はあるわけですから、法人自らが追認すれば、その契約の効果をその法人に帰属させることができることになるのです。

このように、どちらの説を採るかによって、大きく法律構成が変わってくるのですが、実際上、判例は権利能力制限説を採用し、その目的の範囲を広く解して、権利能力の範囲を広げていますので、大きな差はありません。

理論的に、このような争いが一応は問題になるということです。

■■ 編集後記 ■■

今日は、かなり難しい話になってしまいました。

でも、豆知識で紹介したようなことは理解する必要はないと思います。

要するに、法人というのは、一定の目的のために認められたものであるから、何でもできるわけではなく、目的による制限があるということだけ知っておけばいいと思います。

民法を勉強し始めて、最初に難しく思えるのが、この能力の部分だと思います。

民法上は、権利能力、意思能力、責任能力、行為能力、の4つの能力があります。

似たような言葉なのですが、意味は全然違うので、また、少しづつ説明していきたいと思います。

ちなみに、未成年者が携帯電話の契約をする時に、親の署名や印鑑が必要なのは、なぜでしょうか?

以前にこのメルマガで紹介した4条あたりの未成年者の部分を読んでいた方ならわかると思うのですが、未成年者は行為能力がないからです。

未成年者は権利能力はあるが、行為能力がない、という状態なのです。

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