第405号 2019・1・16

■■ はじめに ■■

みなさん。おはようございます。

今日から保証人の求償権の解説に入ります。

保証人の求償権というのは、簡単に言うと、保証人が主債務者に代わって債務を弁済した場合に、その分を主債務者に支払うように請求することができる権利です。

その求償権について、459条から465条までの条文がいろいろと規定しています。

今日は、最初の459条の解説です。

それでは、さっそく始めていきます。

▼▼▼ 第459条(委託を受けた保証人の求償権) ▼▼▼

1項
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済すべき旨の裁判の言い渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。

2項
第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。

■■ 解説 ■■

保証人は、連帯債務者と異なり、自分の負担部分というものがありません。

したがって、保証人が債権者に対して弁済したときには、全額について債務者に対し求償権を取得します(459条〜464条)。

民法は、保証人が主たる債務者の委託を受けて保証した場合(459条〜461条)と、そうでない場合(462条)とを区別して規定しています。

委託を受けて保証した場合というのは、簡単に言うと主債務者に頼まれて保証人になった場合です。

ここからの説明は、まだ解説していない委任(643条)や事務管理(697条)の理解が無いと分からないと思いますので、今は読み飛ばしていただいても大丈夫です。

要するに、委託を受けた場合でも受けない場合でも、保証人は債権者に弁済した場合、主たる債務者に求償できるけど、その根拠が違うということです。

前者の場合の保証人(受託保証人)の弁済は、委任事務の処理に該当し、その求償は事務処理に必要な費用の償還請求に当たります(649条、650条)。

後者の場合には、事務管理に該当し、その求償は、事務管理者の費用償還請求に当たります(702条)。

それぞれ、根拠となる条文がありますので、仮に459条から464条がなかった場合でも、それらの条文に基づいて求償することができます。

しかし、民法は保証人の求償権について特別に459条から464条を定めているので、委任や事務管理の規定は適用されません。

もっとも、内容は一部異なるところがありますが、ほとんど変わりません。

さて、ここまでが保証人の求償権についての総論的な説明です。

今回は459条の解説です。

まずは1項の解説です。

459条は、委託を受けた保証人の求償権についての規定です。

459条1項は、委託を受けた保証人が求償できる3つの場合を規定しています。

まず、委託を受けた保証人は、「過失なく債権者に弁済すべき旨の裁判の言い渡しを受け」た場合に求償権を行使できます。

この場合、裁判の言い渡しを受けただけで、まだ現実に支払いをしていないわけですが、事前に求償することができるということになります。

次に、「主たる債務者に代わって弁済をし」た場合に求償することができます。

これは、現実に主債務者に代わって弁済しているわけですから、求償できるのは当然ですよね。一番分かりやすい場合でしょう。

最後に、「その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたとき」に求償することができます。

例えば、債権者甲が債務者乙に100万円の貸金債権を有しているとします。

その乙の甲に対する債務について丙が保証をしたとします。

そして、丙は甲に対して100万円の金銭債権を有していました。

         100万円
  甲(債権者)---------------------->乙(主債務者)
        ---------------------->丙(保証人)
            100万円
        <---------------------

この時に、丙が甲に対して有する100万円の債権で相殺したような場合です。

このような場合も、実際に100万円を支払ったわけではありませんが、実質的に100万円を弁済したのと全く同じことをしているので、求償することができます。

次に2項の解説です。

442条2項の規定を準用すると定められています。

442条2項というのは、連帯債務者間における求償権の範囲についての規定です。

これは既に解説してあるので、442条2項の部分を復習しておいて下さい。

同じ内容ですので、今回は特に解説することはありません。

↓442条の解説
https://www.mainiti3-back.com/g/386/

■■ 豆知識 ■■

特に解説するまでも無いと思いますが、念のために説明しておきます。

保証においては、主たる債務と保証債務との間には付従性の関係があります。

したがって、保証人の主たる債務者に対する求償のみが認められ、主たる債務者の保証人に対する求償が認められないのは当然のことです。

■■ 編集後記 ■■

求償権については、既に連帯債務のところで解説しているので、特に難しいことはなかったと思います。

連帯債務者と少し違うのは、保証人は、一定の場合に、弁済する前にも事前に求償権を行使できる場合があるという事です。

保証人が事前に求償権を行使できる場合があるというのは、時々試験でも出題されますので、覚えておきましょう。

発行:株式会社シグマデザイン
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(裏編集後記)

今、気付きましたが、このメルマガが今年の第1号となりました。

発行頻度を上げようと思っていたのに、かなり久しぶりの発行になってしまいました。

ということで、今年もよろしくお願い致します。

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