第353号 2012・6・4
■■ はじめに ■■
みなさん、おはようございます。今日から416条の解説です。
私は、音楽を聞きながら仕事をする事が多いのですが、聞きたい音楽があるけどCDなんかが無い時はYouTubeで探します。
YouTubeで探すと、ほとんどの音楽は見つかるんですよね。
ポイントは、検索する時に、日本語ではなく英語を使って検索すること。
これで、ヒットする動画の数が数十倍になります。
インターネットの世界は圧倒的に英語のコンテンツが多です。
アーティスト名とか曲名とかをローマ字にして検索するだけでもかなりヒットします。
それでは、さっそくはじめましょう。
▼▼▼ 第416条(損害賠償の範囲) ▼▼▼
1項
債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2項
特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
■■ 解説 ■■
前回まで3回にわたって解説していた415条は、債務不履行に基づく損害賠償の要件についての規定でした。
履行遅滞、履行不能、不完全履行の中のどれか1つの要件を充たせば、債務不履行に基づく損害賠償請求権が発生します。
では、債務不履行責任が発生した場合、どのような法的効果が認められるのでしょうか?
415条には、損害賠償請求権が発生するとしか書いてありません。
具体的に、どれくらいの損害賠償請求ができるのかというのが問題になります。それについて規定してあるのが416条です。
416条は、債務不履行に基づく損害賠償請求の効果について規定した条文です。
結論を簡単に申し上げれば、1項で通常事情によって生ずべき損害は相当因果関係の範囲内にある限り無条件に認められ、2項で特別事情によって生じた損害は、債権者が予見可能性を主張・立証すれば認められます。
1項の通常生ずべき損害というのは、社会通念上、債務不履行によって一般に生ずると考えられる損害です。
簡単に言えば、一般人の感覚からして、常識的に考えられる損害です。
2項の特別事情によって生じた損害というのは、当該債務不履行の場合に特有の事情によって発生した損害のことです。
簡単に結論だけ申し上げましたが、損害賠償の金額というのは、実際の裁判でも最も争いの激しい部分ですし、複雑で難しい問題があります。
ここでは、あまり深入りせず簡単に1項と2項の違いだけ説明したいと思います。
まず、1項の通常事情によって生じた損害は、相当因果関係の範囲内にある限り損害賠償請求できます。
例えば、乙さんが、大事な得意先を接待するためのパーティーを開こうと思って、ビール100本を甲さんから買う契約をしたとします。
甲さんが売り主、乙さんが買主のビール100本を目的物とする売買契約です。
しかし、約束の期日に甲さんがうっかり忘れていて、ビール100本を持ってきませんでした。
乙さんは、ビール100本がなかったので、予定していたパーティーを開くことができませんでした。
この時、パーティを開くために予約しておいたホテルの使用料金(キャンセル料)、これは1項の通常事情によって生じた損害に含まれます。
ビール100本を届けなければ、パーティができないということは通常生ずべき事情ですし、相当因果関係の範囲内です。
次に、2項の特別事情によって生じた損害です。
さきほどの事例で、パーティーをすることができなくなったために、ビールが大好きでビールが無ければ生きていけないという人がショックで突然死したとします。
これは、1項の通常事情によって生じた損害には含まれず、2項の特別事情によって生じた損害に含まれます。
一般人の感覚から常識的に考えて、ビールを届けなかったらショックで誰かが死ぬなんてことは考えられないですよね。
これは当該債務不履行の場合の特有な事情ですので、2項によって処理されます。
2項の特別事情によって生じた損害に該当する場合、1項の時には必要なかった要件が1つ加わります。
特別事情によって生じた損害ですので、公平の観点から要件を厳しくして債権者と債務者の利益のバランスを取るわけです。
加えられる要件は、特別の事情を債務者が予見し又は予見することができたことです。
これを債権者が立証しなければなりません。
さきほどの具体例で言えば、甲さんは「ビールを届けなければ、ショック死する人が出るということを予見し又は予見することができたはずだ」ということを乙さんが主張・立証しなければなりません。
もし、乙さんが立証に成功すれば、ショック死した分についての損害も請求することができます。
ただ、今回の件に関しては、立証は基本的には無理でしょう。
■■ 豆知識 ■■
416条は、相当因果関係説と保護範囲説の2つの説の対立があります。
ここでは、相当因果関係説からの解説をしました。
■■ 編集後記 ■■
416条は、深入りすると本当に難しいです。
損害賠償算定の基準時という話もあって、目的物の価格が高騰している場合とか、中間最高価格の場合などの問題もありますが、今はあまり気にしないで下さい。
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法律家は、文章を読んで書くスピードが必須です。
それでは、次回もお楽しみに。
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