第345号 2010・11・8
■■ はじめに ■■
みなさん、こんばんは。今日は、民法の中で最も重要度の高い条文の一つである412条の解説です。
特に、宅建、行政書士、司法書士、司法試験などの受験生は要チェックです。
少し混乱しがちな条文ですので、試験では必ずと言っていいほど狙われる条文です。
しばらく楽な条文が続いていましたが、今回は気合いを入れて読んで下さい。
さて、前々回くらいに格安で英会話のマンツーマンレッスンが受けられるサイトを紹介しました。
スカイプという無料ソフトを使うオンライン英会話です。そのオンライン英会話を実際に受講された読者の数人の方から、他のおすすめのオンライン英会話を教えて欲しいとの問い合わせがあったので、紹介しておきます。
オンライン英会話のhanasoというサイトです。
比較的新しいサイトなのですが、新しいだけに頑張っていろいろとキャンペーンを実施しています。
講師も元気のある女性の講師がそろっています。
現在、無料で体験レッスンを受けることができるので、ぜひ体験だけでもしてみてくださいね。
それでは、さっそくはじめましょう。
▼▼▼ 第412条(履行期と履行遅滞) ▼▼▼
1項
債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。
2項
債務の履行について不確定期限があるときは、債務者はその期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。
3項
債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
■■ 解説 ■■
この412条をしっかりと理解するためには、債権法の全体を理解している必要があります。
また、条文に関連する知識もたくさんあります。
今、ここで全てを解説することはできませんし、たくさん紹介しても、一回では吸収できないと思いますので、ほんとの基本的な部分だけ解説したいと思います。
412条は、1項から3項まであるのですが、全て履行遅滞になる時期を定めている条文です。
もし、民法の勉強をすでにしたことがある人なら、履行遅滞の要件は全て暗唱できなければなりません。
履行遅滞の要件というのは、それくらい重要です。
民法の勉強が初めてという人は、聞き流してください。
履行遅滞の要件は、
1、債務が履行期に履行可能なこと
2、履行期を徒過したこと
3、履行遅滞が債務者の帰責性によること
4、履行しないことが違法なことこの4つが履行遅滞の要件です。
これでは分かりにくいと思いますので、具体例を挙げます。
11月8日に、甲さんが、乙さんに100万円を貸しました。
返済日は、11月20日とします。
この場合、当然ですが、乙さんは、弁済期である11月20日に、甲さんに対して100万円を返済しなければなりません。
しかし、乙さんが11月20日を過ぎても返済しなかったとします。
このような場合に、乙さんは履行遅滞責任というものを負うことになります。
具体的には、甲さんは、強制執行(414条1項)をしたり、損害賠償請求(415条)をしたり、解除(541条)をすることができるようになります。
このように履行遅滞に陥ると、様々な重い責任を負わされることになります。
ということで、いつから履行遅滞責任を負うのかというのは当事者にとって極めて重要な要素なのです。
履行遅滞を簡単に解説したところで、1項から見ていきましょう。
1項は、確定期限の定めのある債権についての規定です。
これは、まさにさきほどの具体例のような場面が該当します。
弁済期が11月20日と確定しているわけですから、当然、その期限が到来した時から履行遅滞責任を負うことになります。
当然のことを規定しただけの条文です。
次に、2項です。
2項は、不確定期限の定めのある債権についての規定です。
不確定期限というのは、いつか必ず実現することは確実だが、それがいつ実現するのかはわからないというものです。
例えば、「次に雨が降ったら、君に100万円をあげる」というような契約の場合です。
確かに、純粋論理的には、地球上に二度と雨は降らないかもしれません。
しかし、法というのは、社会通念に基づく規範です。簡単に言えば、常識的に考えるということです。
常識的に考えれば、いつかはわからないけど、雨は必ず降ります。
だから、さきほどの具体例のようなものは不確定期限にあたります。
そして、不確定期限の定めのある債権は、債務者がその期限の到来したことを知った時から履行遅滞になります。
さきほどの例でいえば、雨が降ったことを債務者が知った時から履行遅滞になるということです。
最後に、3項です。
3項は、期限の定めのない債権についての規定です。
期限の定めのない債権というのは、解除による返還請求権などです。
例えば、甲さんが乙さんに100万円でバイクを売ったとします。
そして、バイクの引き渡しも、代金の支払いも済んだとします。
ところが、その後、何らかの事情で契約が解除されたとします。
すると、甲さんはバイク、乙さんは100万円をお互いに「返せ!」ということができる権利を取得します。
この返還請求権が、期限の定めのない債権です。
簡単に言うと、いつまでに返せという期限が定まっていない債権ということです。
このような期限の定めのない債権は、債務者が履行の請求を受けた時から履行遅滞になります。
以上が、412項の基本的な条文の知識です。
他にも大事な知識はたくさんあるのですが、まず、これだけは絶対に覚えてしまってください。
■■ 豆知識 ■■
冒頭で、412条は混乱しやすいので試験によく出題されるということを書きました。
何が、混乱しやすいのかというと、消滅時効の起算点と混乱してしまいがちなのです。
履行遅滞の起算点と消滅時効の起算点というのは、全く別の制度なのですが、似ている部分が多いので、民法の体系を理解していないと、ちょっとひねられると間違えてしまうのです。
例えば、2項の解説の時に使った「次に雨が降ったら、君に100万円をあげる」という契約を見てみましょう。
さきほど解説したとおり、履行遅滞の起算点は、雨が降ったことを債務者が知った時です。
では、消滅時効の起算点はどうでしょうか?
少し考えてみてください。
消滅時効の起算点は、166条1項に「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」と規定されています。
さきほどの具体例で言えば、雨が降った時に、期限が到来しているわけですから、債権者は、その時から100万円を支払えと言えるのです。
つまり、雨が降った時が「権利を行使することができる時」なのです。
このように履行遅滞の起算点と消滅時効の起算点がズレる場面がいくつかあるので注意しなければならないのです。
■■ 編集後記 ■■
今日の412条のような民法全体を理解していないと解説することができない条文が出てくると、条文を順番に解説していくというスタイルに限界を感じます。
民法は、全体の体系が理解できないと、個別の部分もよく分からないということが多くて、だから学者の先生たちも、本を書く時に、どういう順番で書くのかで苦労されていいるのです。
有名な民法の学者の本の目次を見比べてみても、ほんとに体系を先生によって違います。
個人的に、わかりやすいという点でおすすめなのは、やっぱり内田先生の民法だと思います。
興味のある人は読んでみてください。
↓受験生に圧倒的な人気のある民法の基本書が内田民法です。略して「うちみん」なんて呼ばれることも。
民法を勉強するのが初めてという人は、今日のような条文は分かりにくいと思います。
最初は分からなくて当然ですので、とりあえず読み流すだけでもいいと思います。
全ての条文の解説が終われば、少しずつ細かい部分の理解が深まってくると思います。
ただ、消滅時効の起算点などは、既に解説しているので、わからないという人はバックナンバーなどで確認しておいてください。
冒頭で紹介したオンライン英会話の無料体験レッスンも、せっかくの機会なので、受講してみてくださいね。
それでは、次回のお楽しみに。
発行:株式会社シグマデザイン
http://www.sigmadesign.co.jp/ja/
日本で実施されている資格を調べるには資格キングをご利用下さい。
なお、配信解除希望とのメールをいただくことがあるのですが当方では応じることができません。解除フォームよりご自身で解除していただきますようお願いいたします。
(裏編集後記)
受験生におすすめの在宅アルバイト。簡単な文章を入力するだけでお小遣い稼ぎができます。文章を書く訓練にもなって一石二鳥のお仕事です。
iPadのケースをいろいろ探してたけど、純正ケースが一番使いやすいということになりました。
他に、もっとカッコよくて使いやすいのがあればいいんですけど。
このサイトは、まぐまぐより発行している無料メルマガのバックナンバーです。最新号を早く読みたい場合は、無料メルマガの登録をお願いします。登録はこちらから。
次の記事:>> 民法第413条(受領遅滞)|毎日3分民法解説メルマガ
【YouTube】独学応援!行政書士塾
YouTubeで行政書士試験対策講座を配信しています!ぜひチャンネル登録を!
管理人の著書
【行政書士試験の最短デジタル合格勉強法。iPadを活用した新時代の勉強法】Amazonで絶賛販売中!
メールマガジン登録
このサイトは、まぐまぐより発行している無料メルマガのバックナンバーです。最新号を早く読みたい場合は、無料メルマガの登録をお願いします。登録はこちらから。