第340号 2009・9・21
■■ はじめに ■■
みなさん、おはようございます。
今日は、民法第407条の選択債権についての解説です。
今日の条文の内容は、それほど難しくありません。
ただ、民法の体系を常に意識しているか否かを試すことができる部分があります。
民法のパンデクテン方式を理解することが大切だと分かっていただけるような解説をしていますので、最後まで目を通して下さい。
自分が民法の勉強をする時に常に民法全体の体系を意識しているかどうかチェックしてみてください。
それでは、はじめていきましょう。
▼▼▼ 第407条(選択権の行使) ▼▼▼
1項
前条の選択権は、相手方に対する意思表示によって行使する。
2項
前項の意思表示は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない。
■■ 解説 ■■
前回から選択債権についての解説をしています。
選択権は、当事者間の合意や特に法律の定めがある場合を除いて、債務者に属します。
これは前回解説した406条に規定されています。
そして、その選択権の行使は、相手方に対する意思表示により行います。
これは、相手方のある単独行為と解されており、相手方の承諾は不要です。
これが1項です。
次に、2項です。1項でなした意思表示は相手方の承諾がなければ撤回することができません。
ということは、債権者や債務者などの当事者に選択権がある場合には、その相手方の承諾があれば撤回できますが、当事者以外の第三者が選択権を有していれば、債権者・債務者の両者の承諾がなければ撤回することができないということになります。
選択権を行使すると、債権の目的物が特定します。
目的物が特定することにより、相手方はそれを信頼することになりますから、その後に勝手に撤回を認めると相手方に不測の損害を与えるおそれがあるからこのような規定がおかれています。
■■ 豆知識 ■■
2項の規定によれば、選択権の行使は相手方の承諾がなければ撤回することができませんが、詐欺や脅迫によりなされた選択権の行使は96条1項により取消すことができます。
この理由がすぐにわかるでしょうか?
民法96条というのは何についての規定だったでしょうか?
民法の体系を理解していればすぐにわかると思うのですが、民法96条というのは意思表示についての規定です。
目次を見れば分かると思いますが、民法93条から「第二節意思表示」となっています。
つまり、以前に解説した重要な条文である心裡留保(93条)、虚偽表示(94条)、錯誤(95条)、詐欺・脅迫(96条)は意思表示について適用される規定なのです。
そして、今日の406条は以下のように規定されています。
1項:前条の選択権は、相手方に対する「意思表示」によって行使する。
2項:前項の「意思表示」は、相手方の承諾を得なければ、撤回することができない。
はっきりと「意思表示」と書いてありますよね。
だから、詐欺や脅迫があれば取消すことができるわけです。
選択債権のところでは、わざわざ詐欺や脅迫があった場合には取消すことができるとは規定されていませんが、「意思表示」と見た段階で、「第一編」→「第五章」→「第二節意思表示」の条文も適用されるのだということに気付かなければならないわけです。
このように民法の体系が理解できれば、私たちの民法が採用しているパンデクテン方式のメリットが最大限に生かされるわけです。
■■ 編集後記 ■■
今日の条文は知識としては、難しいものではなかったと思いますが、民法の体系を理解するためのきっかけになる条文ですので、おもしろかったと思います。
何を勉強するにしてもそうですが、最初にその対象の体系をつかんでしまえば、後の理解のスピードが圧倒的に速くなると思います。
ぜひ、目次を参考に体系を見につけましょう。
それでは次回もお楽しみに。
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