第318号 389条 2008・4・3

■■ はじめに ■■

みなさん、こんにちは。今日は、389条の解説です。

いわゆる一括競売について規定している条文です。

この条文は、趣旨について少し争いがあるのですが、わかりやすい多数説の立場から解説したいと思います。

この条文を理解するには、前回の法定地上権を理解している必要がありますので、前回の解説を読んでいない方は、必ず読んで法定地上権を理解しておいてください。

それでは、さっそくはじめていきましょう。

第389条(抵当地上の建物の競売)

1項
抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することができる。

2項
前項の規定は、その建物所有者が抵当地を占有するについて抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。

■■ 解説 ■■

389条1項本文には、「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。」と書いてあります。

つまり、土地に抵当権を設定した時は、建物が建っていなかったが、その後に、建物が築造された場面の規定です。

もし、抵当権を設定した時点で、すでに建物が建っていた場合、その建物の所有者が土地の所有者と同じであれば、388条の法定地上権の問題になります。

しかし、抵当権を設定した時点で、建物が建っていなかったとすれば、法定地上権が成立することはありません。

なぜなら、法定地上権の成立要件である「抵当権設定時の土地と建物が存在していること。」という要件を充たさないからです。

とすると、建物の所有者は、その建物を取り壊して出ていかなければならなくなります。

法律的には、こうなるのですが、事実上、建物の所有者は出ていかないことが多いですよね。

もちろん、裁判をして強制的に退去させることは可能ですが、費用も手間もかかります。

何より、そんな面倒なことになるのであれば、土地の抵当権を実行して、競売にかけたとしても、買い手が現れないということになります。

想像してみてください。

土地が競売にかけられていて、それを買おうと思ったけど、どうやらその土地の上には建物が立っていて、しかもその建物の住民は出て行く気がないらしい、ということになれば、そんなややこしい土地は買いたくないですよね。

ですから、そういう不都合をあらかじめ排除するために、土地と建物をまとめて競売にかけることができるようにしたのです。

これが、389条で一括競売と呼ばれています。

抵当権者は土地だけに抵当権を設定したのですから、当然、建物に抵当権は及びませんので、本来であれば、建物を競売するということはできないのですが、さきほど申し上げたような不都合を回避するために認められた例外的な規定です。

ちなみに、1項但し書きと2項というのは当然の規定ですので、読めば理解できると思います。

1項但し書きは、例えば、土地が1000万円、建物が500万円で売れた場合でも、土地の抵当権者が優先弁済を受けることができるのは、1000万円だけだということです。

■■ 豆知識 ■■

この条文は、2003年に改正されていますので、それ以前に勉強したことがある方は注意してください。

改正前は、土地の所有者が建てた建物の場合のみ一括競売を認めていたのですが、改正後は、そのような限定はなくなりました。

つまり、誰の建物であろうが、一括競売することができます。

■■ 編集後記 ■■

少し難しかったかもしれませんが、一括競売というのがどういうものなのかというイメージができればとりあえず十分と思います。

ちなみに、さきほどの解説は、389条の趣旨を抵当権者側の利益から考える説からの解説でした。

この説からすれば、一括競売するか土地だけを競売するかは、抵当権者の自由ということになります。

他方で、建物を取り壊さなければならなくなることを防ぐという公益的要請を趣旨と考える説もあります。

この説からすると、一括競売するのは、抵当権者の義務だと考えることになりやすいです。

このように、趣旨をどのように考えるのかによって、方向性が全く変わってきます。

趣旨から考えるというのは、論理的思考力を鍛えるのにも役立ちます。

それでは、次回もお楽しみに!!

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