第275号 2007・7・27

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。今日は、民法348条の解説です。

348条は、転質について規定している条文です。

特に難しくはないので、すぐに理解することができると思います。

それでは、さっそくはじめていきましょう!!

▼▼▼ 第348条(転質)▼▼▼

質権者は、その権利の存続期間内において、自己の責任で、質物について、転質をすることができる。この場合において、転質をしたことによって生じた損失については、不可効力によるものであっても、その責任を負う。

■■ 解説 ■■

この民法348条は、転質を認めている規定です。

転質というのは、簡単に言うと、質権者が、さらに質物を他の債権者に対して、質入することです。

転質には、承諾転質と責任転質というものがあります。

承諾転質というのは、質権設定者の承諾を得て、転質を設定することで、責任転質というのは、質権設定者の承諾を得ずに、自分の責任で転質をすることです。

承諾転質の場合は、質権設定者が承諾しているのですから、あまり問題は起きないのですが、責任転質の場合は、質権設定者の承諾がないためいろいろ問題があります。

いつもの具体例で言うと、例えば、みなさんが、ロレックスの腕時計を質入して5万円を借りたとします。

その後、その質屋さんも実は資金繰りに困っていたので、さらにそのロレックスを別の質屋さんに質入したとします。

そのロレックスは、みなさんのものです。

ロレックスの時計を勝手にどんどん流されていってはたまりませんよね。

ですから、責任転質の場合は、転質者が転質権を実行するには、原質権の被担保債権の弁済期が到来している必要があります。

他方で、承諾転質の場合は、そのような制限はありません。

質権設定者が承諾しているわけですから、別に問題ないからです。

転質が認められている趣旨は、質権者が一度質物に固定させた資金を、被担保債権の弁済期前に再び流動させることを可能にしようとすることです。

経済というのは、金が動くことによって活性化するので、できる限り、流動化させようというのが狙いです。

転質については、図で書いて解説するとわかりやすいので、またフォーラムの方にでも図付きの解説をアップしようと思っています。

■■ 豆知識 ■■

今日の豆知識は、細かい話ですし、あまり議論する実益もないので、無視していただいてもかまいません。

責任転質についての法的性質には争いがありますが、判例・通説は、質物再度質入説というのを採用しています。

名前のまんまですが、質に取った物を再度質入するのが、転質だと考える説です。

他には、質権譲渡説や質権質入説などがあります。

興味がある方は調べてみてください。

■■ 編集後記 ■■

今日の解説は、図を使わずに解説するのは非常に難しいので、少し分かりにくかったかもしれません。

少し時間はかかると思いますが、コミュニティの方に必ず図をアップロードしようと思います。

とりあえず、今は転質というのがどういう概念なのかということだけ理解していただければ十分です。

発行:株式会社シグマデザイン
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