第177号 2006・6・18
■■ はじめに ■■
みなさん、こんばんわ。今日は、民法200条の解説です。
民法200条は、3つある占有の訴えの中の最後の類型で、占有回収の訴えについての規定です。
▼▼▼ 第200条 (占有回収の訴え) ▼▼▼
1項
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2項
占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
■■ 解説 ■■
さて、どうでしょうか。
この占有回収の訴えも、占有の訴えの一つの類型というだけで趣旨は変わりません。
ですから、特に難しく考える必要はありません。
占有を奪われた占有者は、占有回収の訴えにより、その物の返還や損害賠償を請求することができるという規定です。
例えば、Aさんがパソコンを占有していて、そのパソコンをBさんに盗まれた場合。
この場合、Aさんはその自分が占有していたパソコンを取り返すべく、Bさんに対して占有回収の訴えを提起して、そのパソコンの返還や損害賠償を請求することができます。
ただ、この占有回収の訴えには、2項があります。
2項は、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができないと規定しています。
特定承継人というのは、ある物を買った人のようなことをいいます。
さきほどの事例で、Bさんがパソコンを盗んだ後、そのパソコンをCさんに売ってしまったような場合、Cさんが特定承継人ということになります。
このCさんのように、占有を侵奪した者から、さらに特定承継人が現れた場合には、もはや占有回収の訴えをすることができなくなります。
これは、取引の安全を保護するために規定されているのでしょう。さらに2項には但し書きがあります。ただし、承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない、と規定されています。
つまり、さきほどの事例でCさんがBさんからパソコンを買った時、そのパソコンが盗難品であるということを知っていたような場合です。
このような場合、Cさんは侵奪の事実について悪意なわけですから、Aさんは未だCさんに対しても占有回収の訴えを提起することができます。
■■ 豆知識 ■■
少し細かいですが、法律系の資格試験にはほんとによく出題されますので、覚えてしまってください。
占有回収の訴えは、「占有を奪われたとき」に提起することができます。
「占有を奪われたとき」というのは、占有者の意思に基づくことなく占有が奪われた場合をいいます。
つまり、詐欺によって奪われた場合や、遺失してしまった場合は、「占有を奪われたとき」にはあたらないので、占有回収の訴えを提起することができません。
■■ 編集後記 ■■
これで、占有の訴えの3つの類型を一応全部紹介したことになります。
ただ、3つの類型があるといっても全部、趣旨は同じなので特に難しいことはありません。
以前の民法197条のあたりで解説しましたが、もう一度確認しておきます。
民法が占有の訴えを規定している趣旨は、自力救済を禁じる一方で、物の事実的な支配を一応保護するためだといわれています。
自分の物に対する占有、つまり、物に対する事実的な支配を守るために占有の訴えは規定されているのです。
物の占有が妨害されている時には、占有保持の訴えという類型を使うし、物の占有が妨害される危険がある時は、占有保全の訴えという類型を使うし、物が奪われた時には、占有回収の訴えを使うというだけの話です。
状況によって、使う類型が異なっているだけの話です。
3つの類型がありますが、すべて趣旨は同じだということを理解しておきましょう。
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