第174号 2006・6・13

■■ はじめに ■■

みなさん、こんにちわ。今日は、民法197条の解説です。

民法197条は占有の訴えという条文の総則的な規定で、具体的な内容は次回の民法198条からとなります。

この占有の訴えというのは、非常にわかりにくいものですが、とりあえず、こういう規定があるということだけ知っておいてください。

きちんと理解するのは、ほんとうに難しいので、今の段階で完全に理解しようとせずに民法を一通り勉強してから戻ってくるというスタンスで読んでください。

それでは、はじめていきましょう!!

▼▼▼ 第197条 (占有の訴え) ▼▼▼

占有者は、次条から第202条までの規定に従い、占有の訴えを提起することができる。他人のために占有をする者も、同様とする。

■■ 解説 ■■

さて、どうでしょうか。

この民法197条は、占有の訴えの総則的な規定ですので、読んだそのままということになります。

ある物に対して占有権を有している者は、その物に対する支配を妨害されたような場合にその回復などを請求することができます。

その回復を請求したりすることが占有の訴えというわけです。

このように、民法が占有の訴えを規定している趣旨は、自力救済を禁じる一方で、物の事実的な支配を一応保護するためだといわれています。

つまり、例えば、Aさんが占有している車をBさんが盗んだとします。

この場合、AさんはもちろんBさんに車を返せといいたいわけですが、直接自分でその車を取り返してくるということは認められません。

これが自力救済が禁止されているということです。

このような場合、自分の物であったとしても、勝手に取り返せば、下手をすれば窃盗罪が成立します。

ただ、何もできないというのはもちろんおかしいですよね。

そこで、民法は占有の訴えということを認めて、物を取り返す手段を認めているわけです。

そして、この占有の訴えは、占有権の本質と関連してきます。

以前に、占有権は、物を事実的に支配している状態、それ自体を保護するもので、所有権などを有していることは必要ないといいました。

それと関連して、この占有の訴えも所有権などを有していなくても、物を事実上支配していて、占有権の認められる者には全員認められます。

一番の典型例が盗人です。

盗人には、とうぜん所有権などはありませんが、一応その物を占有しているわけです。

盗人のような者の占有も一応保護しようというのが、この占有の訴えです。

■■ 豆知識 ■■

民法197条後段の「他人のために占有をする者」の典型例は賃借人です。

また、少し細かいですが、占有補助者は、占有者ではないので、占有の訴えをすることができません。

今日の解説がわかりにくい方は、バックナンバーで占有権の最初のあたりを復習してみてくださいね。

■■ 編集後記 ■■

どうだったでしょうか?かなり難しかったと思います。

議論が抽象的で、なんとなく分かるけど、完全に理解することができないという感じだと思います。

でも、それはみんな同じだと思いますので、安心してください。

次回から、占有の訴えの個別的な条文の解説に入っていきます。

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(裏編集後記)

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