第162号 2006・5・14
■■ はじめに ■■
みなさん、おはようございます。今日は、民法188条の解説です。
この民法188条は186条と似たような条文で、少し理解しにくいと思います。
あまり深く考えずに、ある程度理解することができれば十分です。
それでは、さっそくはじめましょう!!
第188条(占有物について行使する権利の適法性の推定)
占有者が占有物について行使する権利は、適法に有する者と推定する。
■■ 解説 ■■
さて、この条文については特に解説というものはありません。
条文を読んだそのままというだけです。
ある物を占有しているものは、多くの場合、適法な権利を有することが多いことから、ある物を占有している者は適法に占有しているとの推定を与えた条文です。
これが一番重要なのは、民法192条の部分で説明する即時取得という規定の適用が問題になる場面です。
即時取得は善意取得ともいうのですが、詳しくは192条の部分で解説します。
簡単にいうと、BさんがAさんからパソコンを買ったけど、そのパソコンは実はAさんのものではなくCさんの物で、AさんがCさんから借りている物を勝手にに売っただけだったという場合です。
この場合、パソコンはCさんのものですから無権利者であるAさんと取引をしたBさんはパソコンの所有権を取得できないのが原則ということになります。
しかし、一定の要件を充たした場合には、Bさんは他人のCさんのパソコンの所有権を取得することができるのです。
これを善意取得といいます。
そして、善意取得が成立する要件として、Bさんがそのパソコンの所有権がAさんにあると善意・無過失で信じたことが必要です。
ですから、Bさんが自分が善意取得でそのパソコンの所有権を取得したということを主張したければ、自分が善意・無過失だったということを証明しなければなりません。
しかし、BさんがAさんからそのパソコンの引渡しを受けて占有していた場合は、この民法188条が適用されて、Aさんの占有は適法なものと推定されて、善意・無過失が推定されるのです。
つまり、Bさんは自分が善意・無過失であったということを証明する必要がなくなるのです。
反対に、Cさんは、パソコンの所有権は自分のものだと主張したければ、Bさんが善意・無過失でなかったということを証明しなければならなくなるのです。
これが、推定するという意味です。
本来ならば自分が証明しなければならないはずのものが、推定されるので、自分から積極的に証明する必要がなくなるのです。
■■ 豆知識 ■■
今日の条文も民事訴訟法と関連していますので難しいと思います。
民訴では、当事者がお互いに攻撃防御をするのですが、その攻撃防御方法はいくつかあります。
ほんとに細かいし民訴の話なので民法とは直接関係ないので読み飛ばしていただければいいのですが、さきほどの事例でいうと、Aさんの善意・無過失が推定されると、Cさんは、Bさんが善意・無過失でなかったということを証明しなければならなくなります。
そして、そのCさんが証明する攻撃防御方法を「抗弁」といいます。
■■ 編集後記 ■■
今日も難しい解説になってしまいましたが、条文の意味だけわかればそれで十分です。
あまり深く考えてわけがわからなくなるとやる気がなくなりますからね(^O^)
ただ、ほんとうに民法を理解しようと思えば、民事訴訟法の理解が絶対に必要になって きますので、興味のある方は民事訴訟法も勉強してみてくださいね。
民法も要件事実から考えるとすごく分かりやすくなります。
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それでは、次回もお楽しみに!!
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