第160号 2006・5・10
■■ はじめに ■■
みなさん、おはようございます。
今日は、民法186条の解説ですが、この条文はほんとに難しいです。
民事訴訟法という、実際に裁判する場合に適用される法律の知識も必要になってきますので、おそらくよくわからないと思います。
とにかく、条文だけ読んである程度理解できれば十分です。
この民法186条は、とりあえず読み流すだけでもいいと思います。
それでは、さっそくはじめましょう!!
第186条(占有の態様等に関する推定)
1項
占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。
2項
前後の両時点において占有をした証拠があるときは、占有は、その間継続したものと推定する。
■■ 解説 ■■
さて、どうでしょう。
この条文は、詳しく解説すると非常に難しいので、簡単に説明して終わりたいと思います。
何が難しいかというと、この条文は民法だけでなく民事訴訟法の理解がないと意味が分かりくいのです。
今は、民法の勉強をしているわけですが、民法のような法律を実体法といいます。
これに対して民事訴訟法という法律があるのですが、民事訴訟法は手続法といいます。
そして、この民法186条は、実体法と手続法の両方を理解していないとかなり難しいのです。
ですから、あまり気にしなくてもかまいません。
とりあえず、簡単にだけ説明しておきます。
1項は、ある物を占有している者は、それだけで、所有の意思で善意、平穏、公然と占有していると推定されます。
これだと何を言っているのかわからないと思いますが、取得時効の要件を思い出してみてください。
忘れた方は、バックナンバーの民法162条の解説の部分を見てくださいね。例えば、Aさんが、他人のBさんの土地を勝手に20年間占有していました。
すると、Aさんは、Bさんの土地の所有権を取得時効により取得することができるわけです。
しかし、これを裁判で争う場合には、Bさんの土地を取得時効したということをAさんが証明しなくてはなりません。
つまり、162条1項の取得時効の要件を全部Aさんが証明しなければならないのです。
162条1項の取得時効の要件としては、所有の意思、平穏、公然、20年間の占有が必要です。しかし、その証明責任を軽くしているのがこの民法186条なのです。
1項は、占有しているだけで、所有の意思、善意、平穏、公然は推定すると規定しています。
つまり、占有しているという事実があれば、取得時効の成立に必要な要件の中の、所有の意思、善意、平穏、公然は推定されて、証明する必要がなくなるのです。
この時点で、Aさんが証明しなければならないのは、20年間の占有だけです。
そこで、さらに2項です。2項は、前後の両時点の占有を証明すれば、その間は継続した占有があったものと推定すると規定しています。
つまり、Aさんは、20年間ずーっと占有していたということを証明しなくても、占有を始めた時点と、20年後の時点の2つの時点だけ占有していたということを証明すればいいのです。
その2つの時点で占有していたということが証明できれば、20年間ずーっと占有していたということが推定されるのです。
つまり、こういうことです。
さきほど、AさんがBさんの土地を取得時効するには、162条1項の要件を証明しなければならないと言いましたが、実はこの民法186条がその要件のほとんどを推定してくれますので、Aさんが証明しなければならないのは、前後の2つの時点において、自分は土地を占有していた、ということだけなのです。
民法186条は、物を支配しているという事実を一応正当なものであると推定して、占有者の証明責任を軽減しているのです。
■■ 豆知識 ■■
これは民法の豆知識というより完全に民事訴訟法の知識になるのですが、民法186条1項のような規定を暫定真実といいます。
そして、民法186条2項のような規定を法律上の事実推定といいます。
一応、言葉の意味だけ紹介しておきますので、民事訴訟法に興味のある方は、軽く読んでおいてください。
ただ、民事訴訟法はほんとに難しいですから気にしないでくださいね。
暫定真実とは、法律上の推定と異なり、前提事実の証明さえ要求しないで、無条件に一定の事実を推定することによってある規定の要件事実の証明責任を相手方に転換する法技術をいいます。
法律上の事実推定とは、ある実体規定でAという法律効果の要件事実とされている乙事実につき、他の法規で「甲事実あるときは、乙事実あるものと推定する」と定める場合をいいます。
■■ 編集後記 ■■
今日の解説は、難しかったと思います。
私も、解説しながら、なかなかうまくまとまりきらず、分かりやすく解説することができませんでした。
民訴がからみだすと、本当に難しくなるんですよね。
民法の勉強が進めば、民訴の解説も少しやってみようかなと考えています。
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いろいろとインターネットの世界は、ほんとにおもしろいです(^O^)
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