第158号 2006・4・28

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。今日は、民法184条の解説です。

ここ何回かの解説で、引渡しの種類を解説してきました。

民法が、規定している引渡しの態様は全部で、4種類です。

今日は、いよいよ最後の指図による占有移転という引渡しの方法の解説です。

それから、堀江被告が保釈されましたので、それと関連して保釈の解説を裏編集後記で書いていますので、読んでみてくださいね。

保釈の意味を間違えて理解している人が多いので、民法ではなくて、刑事訴訟法の話ですが、この機会に覚えておきましょう。

裏編集後記というのは、このメルマガとは関係のない内容で、ちょっとした私の雑感みたいなものを書いています。

それでは、さっそくはじめましょう!!

▼▼▼ 第184条(指図による占有移転) ▼▼▼

代理人によって占有する場合において、本人がその代理人に対して以後第三者のためにその物を占有することを命じ、その第三者がこれを承諾したときは、その第三者は、占有権を取得する。

■■ 解説 ■■

さて、どうでしょうか。これは、はっきりいって条文だけ読んでも全く意味が分からないと思います。

法律の勉強をする上で、条文は極めて重要なのですが、この184条のように条文だけではよくわからないものがあるのも事実です。

よく分からないときは、具体例を考えてみます。

具体例を考えると、分かりやすくなるというのは、抽象的な議論を具体化するからだと思います。

これも、法律の勉強に限らず全てに応用できるので、試してみてくださいね。

それでは、さっそく具体例をあげます。

Aさんが、自分の所有している車をBさんに売りました。

これは、AB間でのAの車を目的とする売買契約です。

ただ、Aさんは、車をCさんに預けていました。

そこで、AさんはCさんに対して、「オレの預けている車は、Bさんに売ったから、これからは、Bさんのために預かっといてね。」と言いました。

そして、それをBさんにも通知したところ、Bさんも「わかった。」と言いました。

この時点では、車はCさんの手元から一切移動していません。

しかし、この時点で、AさんからBさんに車が引き渡されたことになり、Bさんは車の占有権を取得します。

前回解説した占有改定と似ていますが、第三者が登場している点で異なりますので、しっかりと理解してくださいね。

これが、指図による占有移転という引渡しの方法です。

言葉の説明だけですので、この具体例を覚えておいてください。

一応、条文にさきほどのAさん、Bさん、Cさんをあてはめておきます。

Aさん、Bさん、Cさんを184条の条文の文言にあてはめてもう一度読んでみてくださいね。

具体的な人物を抽象的な条文の文言にあてはめるという訓練をしておくとすごく勉強になりますし、後で違う法律を勉強するときも理解がすごく早いです。

Aさん=「本人」

Bさん=「第三者」

Cさん=「代理人」(車をAさんの代わりに占有しているという意味で代理人)

■■ 豆知識 ■■

さきほどの具体例で、Aさん、Bさん、Cさんを条文の文言にあてはめたでしょうか。

もし、あてはめたとすれば、あることに気づくはずです。

それは、Cさんの承諾はいらないの?ということです。

答えは、いりません。

なぜなら、Cさんというのは、Aさんの車を代わりに占有しているだけだからです。

大事なのは、Bさんの承諾です。

これはよく勘違いされている方が多いので注意してくださいね。

法律系の資格試験でも、よくひっかけで出題されますので、要注意です。

先ほどの具体例でいえば、承諾が必要なのは、Bさんです。

単に車を預かっているだけのCさんの承諾は必要ありません。

■■ 編集後記 ■■

これで、民法の規定している4つの引渡しが終わりました。

占有権は、具体的にイメージしにくくて、難しいのですが、重要なので頑張ってついてきてくださいね。

わからなかったら、バックナンバーでいろいろと復習してみてくださいね。

それでは、次回もお楽しみに。

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(裏編集後記)

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堀江被告が、保釈されました。

さきほど、町の人の反応をインタビューしている映像が流れていたのですが、やっぱり勘違いされている方が多いですね。

保釈というのは、金持ちが金を払えば、許してもらえると思っている方がいますが、それは大間違いです。

まず、金持ちだけに保釈が認められるものではありません。

保釈金というのは、その人の経済的な事情を基準に算定されるもので、人によって違うのです。

堀江被告の場合は、3億とか言っていましたが、それは彼が金持ちだからです。

普通の人の場合は、せいぜい数百万円とか数十万円とかです。

しかも、保釈金は、きちんと裁判が終われば返還されます。

いわば、裁判が終わるまで、逃げたりしないための人質のようなものなのです。

反対に、逃げれば、保釈金は没収されます。

だから、没収されると痛いと感じる程度の額が保釈金として決定されるのです。

人によって保釈金の額が違うのはそのためです。

裁判が終わるまでは、前科者でも犯罪者でもなく裁判で有罪が決定してはじめていわゆる前科者になるのです。

ですから、裁判が終わるまでの間は、その人が犯人かどうかわからないのです。

その間だけ保釈で出てくるだけの話で、何も保釈されたからといって変わりはありません。

これから裁判が始まって、実刑判決が出れば、当然刑務所に行かなくてはなりません。

金持ちが金を払って保釈されると、全てが許されると勘違いされている方が多いようなので、ちょっと解説しました。

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