第142号 2006・3・8

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。今日は、141号ということで、民法168条から174条の2の解説です。

一気に進みますが、これはほんとうに条文を読めば理解することができると思います。

そういうものだと思ってさらっと読んでください。

ただ、これらの条文は短期消滅時効といって全て共通の理由がありますのでそれだけ解説の部分で紹介します。

それでは、さっそくはじめましょう!!

第168条(定期金債権の消滅時効)

1項
定期金の債権は、第1回の弁済期から20年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から10年間行使しないときも、同様とする。

2項
定期金の債権者は、時効の中断の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認書の交付を求めることができる。

第169条(定期給付債権の短期消滅時効)

年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、5年間行使しないときは、消滅する。

第170条(3年の短期消滅時効)

次に掲げる債権は、3年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する。

1、医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
2、工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権

第171条

弁護士又は弁護士法人は事件が終了した時から、公証人はその職務を執行した時から3年を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れる。

第172条 (2年の短期消滅時効)

1項
弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権は、その原因となった事件が終了した時から2年間行使しないときは、消滅する。

2項
前項の規定にかかわらず、同項の事件中の各事項が終了した時から5年を経過したときは、同項の期間内であっても、その事項に関する債権は、消滅する。

第173条

次に掲げる債権は、2年間行使しないときは、消滅する。

1、生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
2、自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
3、学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権

第174条(1年の短期消滅時効)

次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。

1、月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
2、自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権
3、運送賃に係る債権
4、旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の代価又は立替金に係る債権
5、動産の損料に係る債権

第174条の2(判決で確定した権利の消滅時効)

1項
確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。

2項
前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

■■ 解説 ■■

さて、どうでしょうか?

おそらくほとんどの方が読み飛ばされたかと思います。

これだけ、条文が続くと読む気がなくなるのも無理はありません。

しかし、法律の勉強をする上で条文をしっかりと読むということは非常に重要なことですので、ぜひ頑張って読んでみてくださいね。

今まで、消滅時効は10年か20年で完成すると説明してきました。

しかし、一定の場合には例外が認められていて、もっと短時間で消滅時効が完成する場合があるのです。

それを定めたのが「短期消滅時効」と言って、今回紹介した条文です。

つまり、今日は「短期消滅時効」についての条文を一気に紹介したわけですが、特に難しいことはありません。

単に、条文で定められた一定の場合には、短期で消滅時効が完成する場合があるということです。

ただ、一つだけ解説が必要なのがこれらの短期消滅時効が定められた趣旨です。

なぜ、一定の場合に、短期間で消滅時効が完成するのでしょうか?

それは、金額の低い債権や日常頻繁に生じる債権については短期間で証明することが困難になるからです。

例えば、170条の医師に関する債権です。

みなさんが、病院で治療してもらったとします。

そして、やってはいけないことですが、3年間逃げばその治療代はチャラになるということです。

当然、治療代を請求するときに根拠となるのはカルテですよね。

カルテを10年も20年も保管しておくのは大変です。

一定の期間が経過すれば、処理するでしょう。

ですから、短期間で消滅時効が成立すると規定されているのです。

あとの条文も全部理由は同じです。

金額の低い債権や日常頻繁に生じる債権については短期間で証明することが困難になるからという、短期消滅時効の趣旨を意識して、これらの条文を読んでいただけると理解できると思います。

肝心なのは、今回の条文ではなくて、時効の基本的な理解です。

基本がわかっていれば今回の条文はすぐに理解できるはずですので、バックナンバーでしっかりと基本を復習しておいてください。

今回で、民法の総則という部分が終わりました。

次回からは、物権という部分の解説に入ります。

物権といっても、「いい物件があります。」の「物件」と混同しないようにしてくださいね。

民法で出てくるのは「物権」です。

漢字が違うし意味も全く違うので要注意です。

■■ 豆知識 ■■

今日は、豆知識は特にありません。

今回の条文は、法律系の資格試験にさえ出題されることはありませんので、自分でしっかりと読んで理解してください。

■■ 編集後記 ■■

冒頭にも言いましたが、条文を自分で読むということの大事さを、今日実感しました。

というのも、今、新しく会社を作っているのですが、その手続きにいろいろと商法やら有限会社法などの条文を使う必要があるのです。

もし、自分で条文を調べるという能力があれば、会社を作るなんて簡単です。

会社を作るときに行政書士や司法書士に頼むと何十万円かかります。

法律っていうのは、深く突き詰めればほんとうに難しいですが、私たちが通常使う法律なんて実はそれほど難しくないのです。

ぜひ、自分で考えるというくせをつけてください。

それでは、次回もお楽しみに!!

発行:株式会社シグマデザイン
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