第123号 2006・1・31
■■ はじめに ■■
みなさん、おはようございます。今日から、時効という民法の中でも非常に重要な部分の解説に入ります。
時効という言葉くらいは聞いたことがあると思うのですが、あまり詳しい内容は知らない方が多いと思いますので、少しずつ理解していってください。
それでは、さっそくはじめましょう!!
▼▼▼ 第144条 (時効の効力) ▼▼▼
時効の効力は、その起算点にさかのぼる。
■■ 解説 ■■
この144条は非常に重要な条文なのですが、その前に時効という制度の説明をする必要があります。
時効とは、ある一定期間の経過によって権利を取得したり、権利が消滅することをいいます。
例えば、Aさんが、Bさんの土地を何十年と占有し続けていた場合、Aさんは、Bさんの土地の所有権を時効によって取得することができるのです。
この時効という制度が認められている趣旨は、以下の3つです。
1、長期にわたって継続した事実状態を法律上も尊重し、法律関係の安定を図る。
2、権利の上に眠っている者は、保護されない。
3、立証困難を救済する。
さきほどの事例でいえば、Aさんは何十年とその土地を占有していたわけです。
にもかかわらず、突然、Bさんから「出ていけ!」と言われると、今までの事実状態が破壊されてしまっていろいろな混乱が生じますよね。
ですから、長期間にわたって存在する事実状態を法律上も保護しようということです。
これが、1の趣旨です。
また、Bさんは、何十年も自分の土地の所有権を行使しなかったわけです。
もっと早く、「出ていけ!」ということができたわけなのに、何もしなかった。
このように、権利を持っているのにそれを行使しない者は法律上保護されないのです。
これを、「権利の上に眠る者は保護されない。」と言います。
これが、2の趣旨です。
さらに、いざ裁判になったとしても何十年も前のことを証明するのは難しいですよね。
ということが、3の趣旨です。
この3つの趣旨の中でも、2の「権利の上に眠る者は保護しない」というのが今までは重要とされてきたのですが、最近ではいろいろな議論があり、激しい争いがありますのでここではあまり深入りするのはやめておきます。
とりあえず、分かりやすい2の趣旨を理解しておいてください。
さて、144条の解説ですが、時効の効力は起算日にさかのぼると規定されています。
これを「遡及効」(そきゅうこう)と言いいます。
どういうことかというと、さきほどの事例でいえば、時効が成立するとAさんは、Bさんの土地を取得することができるというのは既に説明しました。
しかし、いくら時効が成立すると言っても、他人の土地を勝手に占有していたことに間違いはありません。
いわゆる不法占有というやつです。
ですから、BさんはAさんに対して損害賠償請求をすることができるはずなのです。
こう考えるのが普通ですよね。
ただ、144条は遡及効を定めました。
すなわち、時効が成立すると、効力が遡及し、はじめからAさんの土地だったということになるのです。
ということは、Aさんは自分の土地を占有していたことになるので、不法占有ではありませんので、損害賠償請求されることもないというわけです。
■■ 豆知識 ■■
時効と似た概念として、除斥期間というのがあります。
除斥期間とは、一定の時の経過によって権利が消滅する制度です。
ここまでは、時効と同じなのですが、除斥期間には中断という制度がありません。
また、少しずつ説明していきますので、安心してください。
除斥期間という言葉だけ覚えておいてください。
■■ 編集後記 ■■
時効の解説に入ってきましたが、きちんと説明しようとすると、ほんとにきりがありません。
とりあえず、一通り民法の条文を終わらしたいので、最低限のことだけ説明していきたいと思います。
最後の条文まで、全部説明が終わってから、少しずつ深い内容に入っていきたいと思います。
少しずつ深い内容に入っていき、気がつけば民法を理解しているというメルマガにしていこうと思っていますので、これからもよろしくお願いいたします。
とにかく民法は難しいので、こつこつ頑張っていきましょう!!
発行:株式会社シグマデザイン
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(裏編集後記)
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昨日から、裏編集後記というものを書いています。
「裏」ということで、このメルマガとは関係ないことを書くことが多いと思いますので、興味の無い方は読とばしてください(^O^)
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