第100号 2005・12・23

■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。今日は記念すべき100号です。

今日は、117条の解説なのですが、ここまでくると今までに説明した条文を忘れてきている頃だと思います。

忘れた頃にもう一度しっかりと復習する。

これは勉強だけでなくスポーツでもそうですが自分を成長させるための基本です。

毎日のこつこつとした地道な努力が必要です。

バックナンバーも97号までアップしましたので、ぜひぜひ参考にしてくださいね。

サイト内検索機能も設置していますので、わからない言葉が出てきたら検索してみてくださいね。

もし、見つからなかった場合はまだ説明していない言葉ですので、分からなくても安心してください(^O^)

▼▼▼ 第117条(無権代理人の責任) ▼▼▼

1項
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

2項
前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有していなかったときは適用しない。

■■ 解説 ■■

さて、今まで何回も無権代理というものを説明してきました。

この117条は無権代理の中でもとても重要な条文ですので、ゆっくり説明したいと思います。

とりあえず、今日は1項だけ説明します。

まず、無権代理契約がなされた場合、本人の追認がない限り無効だということを説明してきました。

例えば、甲さんの車を乙さんが代理権もないのに勝手に「甲さんの代理人です。」と言って丙さんに売ってしまったとします。

このような場合、乙さんには代理権がないのですから、丙さんは甲さんに対して車を引き渡すように請求することはできません。

ただ、甲さんが追認(116条)すると遡って有効になるので、丙さんは甲さんに車を引き渡すように請求することができます。

反対に、甲さんが追認しないと言った場合には、この契約は無効になります。

無効になると契約はなかったのと同じことですから、丙さんは甲さんに車を引き渡すように請求することはできません。

でも、これは丙さんがかわいそうです。

せっかく車を買う契約をしたのに、無効になってしまい車を手に入れることができなくなってしまうのですから。

このような場合において、悪いのは誰でしょうか?

そうですよね。悪いのは代理権もないのにウソをついて車を勝手に売った乙さんです。

このような乙さんが責任と取るのが当然ですよね。それを定めたのが117条です。

つまり、無権代理人は、本人が追認しない場合には相手方に対して、履行又は損害賠償責任を負うのです。

そして、履行か損害賠償請求かは、相手方が自由に選択することができます。

さきほどの事例でいえば、乙さんは、甲さんが追認を拒絶した場合、丙さんの選択により履行又は損害賠償責任を負うことになります。

具体的にいうと、もし丙さんが履行を選択した場合は、乙さんは何とかして甲さんから車を手に入れて、その車を丙さんに引き渡さなければなりません。

反対に丙さんが、損害賠償請求を選択すれば、乙さんは丙さんに対して、損害が発生した分だけ金を支払うことになります。

実際問題としては、履行拒絶した甲さんから車を手に入れることは困難でしょうから、損害賠償、つまり金で解決することになることが多いです。

■■ 豆知識 ■■

少し難しいので読み飛ばしていただいてもいいのですが、さきほどの事例で乙さんは以前に甲さんから代理権を与えられていたなどの事情があって(112条の解説参照)、表権代理が成立する場合を考えてみてください。

その場合は、丙さんは甲さんに対して車の引渡しを請求することができるので、乙さんは丙さんからの責任から逃れることができるようにも思えます。

しかし、表見代理が成立する場合であっても、無権代理人は、相手方から無権代理人の責任を追求された場合、表見代理の成立を理由に責任を逃れることはできません。

その理由として、表見代理は相手方の信頼を保護して取引の安全を守る制度であって、無権代理人の責任を免れさせるための制度ではないからである、ということがよく言われています。

つまり、さきほどの事例でいうと、丙さんが、乙さんに117条の無権代理人の責任を追及してきた場合、乙さんは「表見代理が成立するんだから、甲さんに車を引き渡すように請求してくれ。」と言って責任を逃れることはできないということです。

■■ 編集後記 ■■

今日の豆知識は少し難しかったと思いますので参考程度にしてくださいね。

これだけいろいろな解説をしてくると、以前に説明したようにと言ってもすぐに思い出せないと思いますので、わからなかったらすぐにバックナンバーを参考にしてくださいね。

また、バックナンバーを参考にするといっても、何号でそのわからない言葉の説明をしているのか探すのが大変ですので、検索機能を活用してくださいね。

サイトの右にサイト内検索を設置していますので、使ってみてください。

もし、言葉を聞いてすぐに「その言葉はだいたい何条あたりで出てくるはずだ。」と思えるようになったら民法の理解はかなり深まっていると思ってかまいません。

ただ、そこまでいくのは大変ですので、あせらずに毎日3分でこつこつ行きましょう。

民法は本気で難しいです。

でも、それだけ重要な法律なのです。

ほぼ全ての法律系の資格試験や公務員試験で出題されます。

それくらい重要な法律なのです。

司法試験の世界でもこういう格言があります。

「民法を制する者は、司法試験を制する!」

難しいと思いますが、一緒に頑張っていきましょう!

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