第330号 民法 第398条の2(根抵当権
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毎日3分!条文+豆知識で民法完全制覇! 第330号 2009・7・3
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■■ はじめに ■■
みなさん、こんにちは。
実は、この1年間いろいろとありまして、発行することができませんでした。
とりあえず、一段落しましたのでまた発行を再開したいと思います。
ご迷惑をおかけしましたが、今後ともよろしくお願いいたします。
さて、今日からは根抵当権の解説に入ります。根抵当権は、司法書士試験では、非常に重要なテーマなのですが、司法書士試験以外では、ほとんど出題されませんので、一般的に重要性は低いです。
根抵当権というのが通常の抵当権とどう違うのかということだけを理解していただければそれで十分かと思います。
根抵当権という制度自体が、民法制定当初には存在しなかったため、398条の枝番号として398条の2から398条の22まで規定されています。これらの条文は、さらっと流していこうと思います。
それでは、さっそくはじめていきましょう。
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▼▼▼ 民法 第398条の2(根抵当権) ▼▼▼
1項
抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。
2項
前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。
3項
特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権又は手形上の請求権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。
■■ 解説 ■■
根抵当権とは、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保する抵当権です。
通常の抵当権と異なり、附従性が緩和されており、随伴性が否定されています。
例えば、甲さんが乙さんに100万円を貸し、その債権を担保するために乙さんの土地に抵当権を設定したとします。
その後、乙さんが、甲さんに100万円を返済すれば、附従性により抵当権は消滅します。
また、甲さんが、被担保債権である100万円の債権を丙さんに債権譲渡すれば、抵当権も随伴性により移転します。
これが通常の抵当権です。
しかし、根抵当権の場合、100万円を返済したとしても抵当権は消滅しませんし、被担保債権が債権譲渡されたとしても、抵当権は移転しません。
なぜ、このような根抵当権という制度があるのかというと、企業間取引など頻繁に借入や返済が繰り返されるような場合に通常の抵当権では不都合が生じるからです。
抵当権というのは、あくまでも特定の債権を担保するためのものですから、取引があるたびに、その特定の債権を担保するために抵当権を新たに設定しなければなりません。
また、返済があれば、その抵当権は附従性により消滅しますので、抵当権を抹消しなければなりません。
要するに、継続的に頻繁に取引がなされる場合、通常の抵当権であれば、その都度抵当権を設定したり抹消したりしなければならず非常に煩雑になってしまうのです。
そこで、一定の事由が生じ元本が確定するまでは、その間になされる一定の範囲に属する債権については極度額までまとめて根抵当権によって担保できるようにしたのです。
根抵当権を設定することによって、債権が発生する都度、抵当権を設定しなければならないという手間が省けるのです。
これを規定したのが、1項です。
根抵当権は、不特定の債権を担保するものですが、何でも無制限に担保できるわけではありません。いわゆる包括根抵当というのは禁止されています。
民法が規定している4種類の債権のみ根抵当権で担保することができます。その4種類が2項と3項で規定されています。
その4種類をまとめると以下のようになります。
1、根抵当権者と債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるもの
2、その他債務者との一定の種類の取引によって生ずるもの
3、特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権
4、手形上もしくは小切手上の請求権
■■ 豆知識 ■■
根抵当権は、コップの中に水が入っている状態をイメージすればわかりやすいと思います。
コップという枠が、極度額であり、コップの中に入る水が被担保債権です。
コップの中に入っている水が、入ったり出ていったりを繰り返しますが、コップという極度額の中にある分については全て担保されます。
そして、一定の事由が生じた段階で、そのコップに蓋がされます。これを元本の確定といい、蓋がされて元本が確定した時点で、コップの中に入っている分が担保されることになります。
元本が確定した後は、附従性と随伴性が復活して通常の抵当権と同じ扱いになります。
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■ 編集後記 ■
根抵当権は、いろいろと細かい規定がたくさんありますが、まずは、通常の抵当権との根本的な違いを理解することが重要です。
附従性が緩和されており、随伴性が否定されているという点が重要です。また、この根抵当権の特徴を知ることによって、抵当権の附従性や随伴性の理解を深めることができます。
それでは、次回もお楽しみに!!
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(裏編集後記)
久しぶりにメルマガを書いたので、これだけの文章を書くのにけっこう時間がかかってしまいました。
やっぱり、ブログでもメルマガでも何でもいいですけど、自分の考えを整理してアウトプットするという訓練は大事ですね。
関連条文
・第333号 第400条 (特定物の引渡しの場合の注意義務)(20092626)
・第332号 第399条 (債権の目的)(20092626)
・第329号 民法 第398条(抵当権の目的である地上権等の放棄)(20091111)
・第328号 民法 第397条(低動不動産の時効取得による抵当権の消滅)(20091111)
・第326号 民法 第395条(抵当建物使用者の引渡しの猶予)(20081313)
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