第326号 民法 第395条(抵当建物使用者の引渡しの猶予)
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毎日3分!条文+豆知識で民法完全制覇! 第326号 395条 2008・7・22
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■■ はじめに ■■
みなさん、こんにちは。
久しぶりの配信になってしまいました。
今年、宅建試験を受験される方が多いと思いますが、もうすぐ願書の受付が終了するので、まだの人は早く願書だけは出しておきましょう。
インターネット受付は終了していますが、郵送での受付は今月の末まで大丈夫ですので、急いでくださいね。
それから、どこか予備校に行こうかと考えている方がいるかもしれませんが、そういう方におすすめのスクールを紹介しておきます。
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私が運営している資格のサイトで、通信教育のフォーサイトについてかなり詳しく解説していますので、興味のある方は見てみてください。
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宅建は、独学でも合格することができると思いますが、やはり近道するには、学校を利用するのがいいと思います。
それでは、さっそくはじめていきましょう。
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▼▼▼ 民法 第395条(抵当建物使用者の引渡しの猶予) ▼▼▼
1項
抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受の時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
2項
前項の規定は、買受の時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその1箇月分以上の支払いの催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。
■■ 解説 ■■
この条文は、2003年以前に規定されていた短期賃貸借という条文の廃止に伴って新たに規定されたものです。
2003年以前に民法の勉強をしたことのない方は全く気にする必要はありませんが、それ以前に民法の勉強をしたことがある方は大きく改正されていますので注意してください。
さて、この395条の趣旨は、建物の賃借人の使用収益する権利を保護することです。
これでは、何のことはわからないと思いますので、具体例を挙げて解説したいと思います。
1項の1号と2号に該当する建物の賃借人がこの条文により保護されることになるのですが、2号に関しては民事執行法との関係もあり難しいので、1号の場合を想定して解説します。
Aさんが甲建物を所有しており、その甲建物には、Cさんの抵当権が設定されていました。
また、Bさんが甲建物を賃借し住んでいました。
しかし、ある時、Aさんが債務の弁済をすることができなくなってしまったので、Cさんが抵当権を実行し、Dさんが甲建物を買い受けました。
甲建物を買い受けたDさんは、当然、せっかく甲建物を買ったのだから、Bさんに出て行くように要求します。
この時に、BさんがDさんの要求に応じて出ていかなければならないのかが問題です。
もし、BさんがAさんから甲建物を借りる時に、Cさんの抵当権より先に、不動産賃借権の登記をしていたとすれば、登記を先にした者が勝ちますので、BさんはDさんの要求を断ることができます。
(債権である不動産賃借権についても登記をすることができるのです。詳しくは賃貸借の部分で解説します。)
もしBさんが登記を先にしていなかったとすれば、Bさんは出ていかなくてはならないのが原則です。
しかし、建物を借りてそこで生活をしていたのに、全く自分の関係のない事情で突然出ていかなければならないということになれば困りますよね。
レンタルビデオ屋で借りてきたDVDを突然返せといわれるのとはわけが違います。
家というのは、生活の基盤ですから突然そのようなことになれば、非常に困るわけです。
そこで、民法395条は、競売の開始前から抵当建物を使用収益している者等については、たとえ登記を得ていなかったとしても、買受人が建物を買い受けた時から6箇月間は、引渡しを拒むことができると規定しているのです。
さきほどの具体例でいえば、Bさんは、たとえ不動産賃借権の登記を得ていなかったとしても、Dさんからの建物引渡し請求を6箇月間は拒むことができるのです。
6箇月間もあれば、次の家を探したりするのに十分な期間があるだろうし、それより長いと今度は、買受人の利益を害してしまいます。6箇月くらいであれば、買受人も我慢できるでしょうから。
2項は、読めば理解できると思いますので解説は省略します。当然のことが書いてあるだけです。
■■ 豆知識 ■■
不動産賃借権というのは、あくまで債権なのです。
177条でも解説したように、登記をすることができるのは、原則として物権だけなのです。
しかし、不動産賃借権というのは、さきほども言ったように重要な権利ですし、ほとんど物権と変わりがありません。
そこで、いろいろな面で、債権であるにも関わらず物権化しているのです。
これを、賃借権の物権化傾向と言います。
「売買は賃貸借を破る」という格言がありますが、不動産賃借権については例外として、登記をすれば、「売買は賃貸借を破らない」のです。
177条の復習をしておいてください。それから、賃貸借については詳しいことは後でやります。
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■ 編集後記 ■
今日の条文は、177条や賃貸借についての知識も必要となりますので、難しかったと思います。
まだ、賃貸借の解説をしていないので、今はわからなくてもかまいません。
ただ、177条はすでに解説しているので、その部分でわからない方は復習をしておいてください。
それでは、次回もお楽しみに!!
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なお、配信解除希望とのメールをいただくことがあるのですが当方では応じることがで
きません。
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(裏編集後記)
いろいろと私事で忙しくて配信することができませんでした。
少しずつ落ち着いてきましたので、また配信を再開しますのでよろしくお願いします。
関連条文
・第333号 第400条 (特定物の引渡しの場合の注意義務)(20092626)
・第332号 第399条 (債権の目的)(20092626)
・第329号 民法 第398条(抵当権の目的である地上権等の放棄)(20091111)
・第328号 民法 第397条(低動不動産の時効取得による抵当権の消滅)(20091111)
・第321号 民法 第392条(共同抵当における代価の配当)(20082424)
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