第237号 民法 第299条 (留置権者による費用の償還請求)
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毎日3分!条文+豆知識で民法完全制覇! 第237号 2007・1・19
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■■ はじめに ■■
みなさん、こんばんわ。
現在、午前2時です。
もう、今日は配信するのはやめようかとも思ったのですが、頑張って配信することにしました。
一日一日を大切にすることが大事ですからね(^▽^)/
さて、今日は、民法299条の解説です。
この民法299条は、重要な条文ですので、しっかりと理解してください。
法律系の資格試験を受験される方は、よく出題される条文ですので、覚えてしまってください。
それでは、はじめていきましょう!!
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▼▼▼ 民法 第299条 (留置権者による費用の償還請求) ▼▼▼
1項
留置権者は、留置物について必要費を支出したときは、所有者にその償還をさせることができる。
2項
留置権者は、留置物について有益費を支出したときは、これによる価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額又は増加額を償還させることができる。ただし、裁判所は、所有者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
■■ 解説 ■■
さきほど、この民法299条は重要だと言いましたが、内容はそれほど難しいものではありません。
以前から、このメルマガをお読みいただいている方であれば、どこかで見た条文だなと思われるかもしれません。
というのも、民法196条の部分で解説した占有者による費用の償還請求とほとんど同じなのです。
ですから、知らないという方や忘れたという方は、民法196条のバックナンバーを確認しておいてください。
まず、1項で必要費の償還を請求することができると規定しています。
そして、2項で有益費の償還を請求することができると規定しています。
このように、留置権者による費用償還請求権を認めている趣旨は、留置権が留置物を留置するのは、被担保債権の弁済を得るためであるからです。
つまり、留置権者が物を留置しているのは、債務者が債務の弁済をしないから、それを促すために留置しているわけであり、その目的物を使用したりするために留置しているわけではないのです。
とすると、そのような留置権者に目的物についての管理費用を負担させるのはおかしいですよね。
債務を弁済しない債務者が悪いのですから、管理費用も債務者が負担しなさい、ということです。
最後に、2項の但し書きについて解説します。
2項の但し書きは、目的物の所有者からの請求により裁判所は期限を許与することができると規定しています。
期限の許与がされた場合、留置権者は留置物を返還しなければならなくなります。
これはなぜだかわかるでしょうか?民法196条の解説でも触れていますので、必ずバックナンバーを読んでくださいね。
留置権というのは、法定担保物権でした。
つまり、当事者の契約によって成立する物権ではなくて、留置権の成立要件を充たせば法律上当然に発生する権利なのです。
とすると、あまりにも小額の債務のために、高額な物を留置される場合も起こりうるということです。
たとえば、1万円の債務のために1000万円するベンツを留置するということがあり得るわけです。
このようにあまりにも不均衡が生じるような場合には、留置権を認めることは相当ではないので、裁判所は期限の許与をすることによって、留置権を消滅させることができるのです。
もし、留置権が、約定担保物権だとしたらどうでしょうか??
約定担保物権というのは、当事者の契約によって成立する担保物権です。抵当権などがそれにあたります。
当事者の契約によって、成立する約定担保物権だとしたら、当事者は、1万円の債務のために、わざわざ1000万円のベンツを目的として留置権を成立させないでしょう。
仮に、そのような契約をしたとしても、当事者が自分の意思で契約しているわけですからそれでかまいません。
しかし、留置権は法定担保物権です。当事者の意思にかかわらず、当然に発生する権利なのです。
ですから、あまりにも不相当な場合でも留置権が発生してしまうのです。
そのために、2項但し書きのような規定があります。
■■ 豆知識 ■■
さきほど、民法196条とほとんど同じだといいましたが、少し違う点がありますので、細かいですが、それを豆知識として紹介しておきます。
留置権の必要費償還請求権には、196条1項但し書きのような果実収取の場合の規定はなく、必要費に関して果実を収取し、債権に充当しても全額についての返還請求ができる。
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■ 編集後記 ■
どうだったでしょうか?
民法196条の部分でかなり詳しく解説していますので、そちらを読めば今回の解説もわかると思います。
このメルマガでは、できるだけ条文の趣旨や本質から解説するようにしていますので、単に覚えるだけではなく、理解しながら覚えるようにしてください。
一度理解したことは、忘れません。単に知識として記憶しているだけではすぐに忘れますので、結局時間をかけて理解して覚えた方が近道です。
それに、趣旨や本質から考えるとほんとに民法という法律がよくできていることに気づくはずですし、おもしろくなってくると思います。
それでは、次回もお楽しみに!!
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(裏編集後記)
企業の財務データの読み方がわかってきました。
ですから、株取引もおもしろくなってきました。
なんでも、ある程度わかってくると面白くなってくるものです。
わからないうちは、おもしろくないから止めてしまうものですが、それを乗り越えれば面白くなるということを知っていれば、乗り越えられるはずです。
頑張りましょう!!
関連条文
・第236号 民法 第176条物権の設定及び移転)補足(20073030)
・第235号 民法 第298条 (留置権者による留置物の保管等)(20072222)
・第234号 民法 第297条(留置権者による果実の収取)(20071818)
・第233号 民法 第296条(不可分性)(20071818)
・第231号 民法 第295条(留置権の内容)(20070404)
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