第173号 民法 第196条 占有者による費用の償還請求 解説
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毎日3分!条文+豆知識で民法完全制覇! 第173号 2006・6・9
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■■ はじめに ■■
みなさん、こんにちわ。今日は、民法196条の解説の続きです。
前回の1項の解説をしっかりと理解しておいて、今日解説する2項と混同しないように注意してくださいね。
それでは、はじめていきましょう!!
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▼▼▼ 民法 第196条 (占有者による費用の償還請求) ▼▼▼
1項
占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2項
占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増加額を償還
せることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
■■ 解説 ■■
前回は、1項について解説しました。1項は、必要費についての規定でした。
そして、この2項は有益費についての規定です。
費用、必要費、有益費という言葉をしっかりと区別してくださいね。
費用という概念の中で、さらに必要費と有益費に分かれます。
必要費と有益費のイメージはだいたいつくと思うのですが、一応正確な定義を上げておきます。
必要費とは、物の保存と管理に必要な費用をいいます。(例)修繕費、税金
有益費とは、物を改良し、物の価値を増加させる費用をいいいます。(例)雨戸の新調
ということで、今日は占有者が有益費を支出した場合を規定した2項の解説です。
ある物の占有者が有益費を支出していた場合、真の所有者等からその物の返還を請求された場合、その物の価格の増加が現存する場合に限り、支出した金額、又は、増加額の償還を請求することができます。
例えば、Aさんの建物を、何らかの理由でBさんが占有していたとします。
そして、占有中にBさんがその建物の雨戸を新調しました。
その直後に、Aさんからその建物の返還を請求されました。
この場合、Bさんは雨戸の新調という建物の価値を上げる有益費を支出したわけで、しかも、新調後すぐに返還請求されているわけですから、価値の増加が現存しているといえます。
ですから、BさんはAさんから返還を請求された場合、建物の増加した価額か、実際に新調にかかった金の返還を請求することができます。
もし、さきほどの事例でAさんが返還請求したのが、雨戸の新調から10年後だった場合はどうでしょうか。
この場合は、10年もたてば、雨戸の価値はほぼ無くなっているでしょうから、価値の増加が現存しているとはいえないので、費用の償還を請求することができません。
「価格の増加が現存する場合に限り」というのはこういう意味です。
最後に、もう一つ。民法196条2項には但し書きがあります。これがちょっと難しいです。
但し書きには、占有者が悪意の場合には、裁判所は回復者の請求により期限を許与することができると書かれています。
つまり、占有者が悪意の場合でも、費用の償還は請求できるけど、一定の場合には、裁判所が償還について相当の期限の許与をすることができるということです。
期限の許与というのが難しいと思います。
これは、もうちょっと後で出てくる留置権と絡む問題なのですが、通常の場合であれば、費用を支出したBさんは、留置権の主張ができるので、Aさんが費用の償還をするまで建物の明け渡しを拒むことができるのです。
しかし、裁判所が期限の許与をすると、Bさんは留置権の主張をすることができなくなるのです。
つまり、無条件に建物の明け渡しに応じなければならなくなります
なぜなら、留置権の成立要件として「債権の弁済期が到来していること」という要件が必要なのですが、裁判所の期限の許与によって、この要件を欠くことになるからです。
この但し書きの部分は、留置権の解説を聞いてからでないと分からないと思いますので今は、気にしなくてもかまいません。
分からなくて当然です。
そういえば、ミナミノ帝王のけっこう最近のやつで、留置権の話が出てきていました。
あの映画は無茶な部分もあって、あんまり勉強にはなりませんが、留置権のイメージくらいはつくと思います。
確か、「ミナミの帝王 野良犬の記憶」というタイトルだったと思います。
■■ 豆知識 ■■
民法196条を簡単にまとめます。
1項
必要費は、占有者が善意でも悪意でも全額償還を請求できる。(原則)
ただし、果実を取得した場合は、通常の必要費は占有者の負担。(例外)
2項
有益費は、占有者の善意・悪意に関係なく、返還時に価格が現存する場合に限り、増加額又は、支出額を回復者の選択に従い請求できる。
ただし、占有者が悪意の場合には、裁判所に期限の許与があり得る。
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■ 編集後記 ■
今日の解説は少し難しかったと思います。費用、必要費、有益費という似たような言葉で混乱していまいます。
しっかりと、それぞれの言葉の意味を覚えて混乱しないようにしてくださいね。
費用、必要費、有益費という言葉は、民法を勉強していく上で何回も出てきますので、この機会に完全に覚えてしまってくださいね。
それから、但し書きの部分は特に難しかったと思います。留置権をまだ勉強してないのでほんとに今は気にしないでください。
こんな話があったなー、ということだけ覚えておいて、留置権の解説が終わった後にまた戻ってきてください。
行ったり、戻ったりするというのが民法を勉強するためのコツです。
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(裏編集後記)
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