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第164号 民法 第190条 悪意の占有者による果実の返還等 解説

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毎日3分!条文+豆知識で民法完全制覇! 第164号 2006・5・19
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■■ はじめに ■■

みなさん、おはようございます。

今日は、民法190条の解説です。今日の民法190条は、比較的簡単な条文ですので、すぐに理解することができると思います。

難しい条文が続いてきたので、今日は、ちょっと楽な感じがします。

それでは、さっそくはじめましょう!!

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▼▼▼ 民法 第190条 ▼▼▼ (悪意の占有者による果実の返還等)

1項
悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。

2項
前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。

■■ 解説 ■■

前回解説した民法190条は、善意の占有者についての規定でした。

善意の占有者は、果実を取得することができるという規定でしたが、これは、善意であるがゆえに認められている制度でした。

この民法190条は、その反対で、悪意の占有者についての規定です。そして、悪意の占有者は保護する必要がないので、かなり厳しい責任を負わせています。

悪意の占有者というのは、自分の土地でないと分かっているのに、他人の土地を勝手に占有しているような人です。

このような悪意の占有者は、占有していることによって取得した果実を真の所有者に返還する必要があるし、既に使ってしまった分や過失によって損傷した分も返還しなければなりません。

さらに、自分自身が果実を取得していなくても本来であれば取得できたはずの果実を取得するのを怠った分も返還しなければなりません。

果実というのは、典型例が土地の賃料だということは前回解説しました。

例えば、AさんがBさんの土地を勝手に占有して、その土地の一部をCさんに貸して賃料を得ていたとします。

しかし、AさんはCさんから賃料を取り立てるのをめんどくさいので、怠っていたとします。

すると、本来であれば取り立てられたはずの賃料をAさんは、Cさんから受け取っていないにも関わらずBさんに支払わないといけないのです。

民法190条は、悪意の占有者は保護する必要がないということで、かなり厳しい責任を負わせています。

2項については条文を読めば理解することができると思います。

暴行などの手段を用いて占有している者に対しても1項と同じ責任を負わせているということです。

■■ 豆知識 ■■

さて、この民法190条と以前に民法144条で解説した時効が絡む応用的な問題です。

悪意の占有者には厳しい責任が課せられていますが、他方で、悪意の占有者でも時効によって所有権を取得することができます(民法162条1項)。

そして、取得時効が完成するとその効力は、起算日に遡ります(民法144条)。

とするとどうなるでしょうか?

本来悪意の占有者であれば、取得した果実などの返還義務を負いますが、取得時効が完成するとその効力は起算日にまで遡りますので、占有を始めた時点から、その土地の所有者だったということになります。

つまり、果実を返還するなどの責任はなくなります。

これが、時効の効力は起算日に遡るという意味です。

仮に、時効の効力が遡らないとすればどうなるでしょうか?

時効の効力が遡らないということは、時効が完成した時点から、その土地の所有権者となるということです

つまり、時効が完成した時点以後は、その土地の所有権者なわけですから、当然賃料を返還するなどの民法190条の責任は負いません。

しかし、時効が完成するまでの間は、やはり悪意の占有者だったということになるわけですから、その間についての賃料などは返還する責任があることになります。

ちょっとした頭の体操ですので、一度じっくり考えてみてください。

効力が遡るということはどういうことなのか?ということの理解が深まると思います。

時効に関して分からない方や、忘れた方は、バックナンバーを参考にしてください。

民法144条民法162条1項の部分が参考になると思います。

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■ 編集後記 ■

さきほどのように、効力が遡及するとどうなるのか?効力が遡及しないとどうなるのか?というように、前提をいろんなパターンに変えてみて、それを前提にするとどういう結論になるのか、ということを考えると論理力が身につきます。

論理力をつけるための本が最近かなり売れているようです。ロジカル・シンキングというのですが、社会人の方がプレゼンを成功させるために勉強されているようです。

プレゼンというのは、要するに相手を説得させることです。

そして、相手を説得させるためには、論理が必要です。論理がなくスジの通っていない話を聞いて納得する人はあまりいません。

つまり、論理力を鍛えれば、プレゼン能力が間違いなく向上するのです。

興味のある方は一度読んでみてください。

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ちなみに、批判的に文章などを読むことをクリティカル・シンキングといいます。

クリティカル・シンキングのトレーニングにおすすめといわれているのが、新聞の投書欄のようなコーナーの、読者の投書を批判的に読むことです。

投書欄くらいのレベルの文章であれば、論理性はあまりないので、批判するのは簡単です。

クリティカル・シンキングを鍛える初歩的なとレーニングになるといわれています。

最後に、さきほどのプレゼンの話の部分は三段論法を使っています。

論理をつなげるためによく使う技術の一つでかなりの説得力があります。

一度、考えてみてください。

大前提:プレゼン → 相手を説得させること

小前提:相手を説得させるためには → 論理的思考力が必要

帰結:論理的思考力があれば → プレゼンがうまくいく

それでは、次回もお楽しみに!!

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(裏編集後記)

論理的にものを考えるというのは、ほんとに難しいです。一部分では論理を意識して書いていても全体としてみると矛盾が生じていたり、論理性が薄かったりすることがよくあります。

このメルマガも、論理が通っていない部分が多々あると思いますが、その点は甘くみてくださいね(^O^)

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