第159号 民法 第185条 占有の性質の変更
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毎日3分!条文+豆知識で民法完全制覇! 第159号 2006・5・8
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■■ はじめに ■■
みなさん、おはようございます。
ゴールデンウィークも終わって、明日から通常どおりという方が多いと思います。
また、気持ちを新たに頑張っていきましょうね。
前回で、民法が規定している引渡しの4つの類型の説明は終わりました。
ということで、今日は民法185条の解説です。この185条の解説はかなり重要性が高いのでしっかりと理解してくださいね。
話は変わりますが、最近少しずつ英語の勉強をしております。広告費で運営されているので無料で利用できる英語のメルマガのサービスがあります。
なかなか、質が高いと思うので、英語に興味のある方はどうぞ。
それでは、さっそくはじめましょう!!
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▼▼▼ 民法 第185条 ▼▼▼ (占有の性質の変更)
権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。
■■ 解説 ■■
さて、この条文ですが、例によって、これだけ読んでもよくわからないと思います。
この条文は、他主占有が自主占有へと転換するための要件を規定した条文です。
自主占有と他主占有という言葉の意味はわかるでしょうか?
以前にも解説しましたが、簡単に説明すると、自主占有というのは、所有の意思を持ってする占有をいいます。
そして、他主占有というのは、その他の占有をいいます。
この自主占有と他主占有かでいろいろなことに影響があるのですが、一番大きなポイントは、取得時効(162条)です。
民法162条で解説した取得時効の要件を覚えているでしょうか。
分からない方は、バックナンバーで確認しておいてくださいね。
取得時効の要件として、自主占有していること、という要件が必要でしたよね。
つまり、何十年間という期間、占有を続けていたとしても、その占有が他主占有であれば、取得時効は成立しないのです。
ですから、取得時効を主張したい者にとっては、自己の占有が自主占有なのか、他主占有なのか、ということは非常に重要なのです。
そして、この民法185条は、当初は他主占有であったものが、あることをきっかけに自主占有へと転換する場合があるということを規定しています。
2つの場面を規定していますので、それぞれ具体例をあげて説明します。
まず、「その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示」した場合です。
例えば、Aさんが、自分の家をBさんに貸しました。
これは、Aさんの家を目的とする賃貸借契約です。
とすると、Bさんは、賃貸借契約に基づいて家を占有しているわけですから、Bさんの占有は他主占有ということになります。
この状態で、何十年占有を続けようが、Bさんはこの家を時効取得することはできません。これは当然ですよね。
しかし、Bさんがある時突然、「この家は自分の物だ!」とAさんに言いました。
この時点で、Bさんの占有は自主占有に転換されます。
Bさんが、Aさんに対して「この家は自分の物だ!」と言ったことが、民法185条の「その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示」したに当たるのです。
つまり、Bさんがこのまま占有を続ければ、Bさんはこの家の所有権を取得時効によって、取得することができる可能性があるのです。
次に、「新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始め」た場合です。
例えば、Aさんが自分の家をBさんに貸しました。
これもAさんの家を目的とする賃貸借契約ですので、Bさんの占有は他主占有です。
しかし、その後、Bさんはその家をAさんから買い取りました。
すると、Bさんの占有はこの時点で、自主占有に転換されます。
Aさんから家を買い取って占有しているわけですから、売買契約による所有権取得という「新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始め」たといえるからです。
このように、民法185条は、他主占有から自主占有へと転換される要件を規定した条文です。
■■ 豆知識 ■■
これは、難しいので、読み飛ばしていただいてもかまいませんが、法律系の資格試験にはよく出題されますので、資格試験に興味のある方は覚えておきましょう。
相続が185条の「新たな権原」と言えるのかという論点があり、重要な判例があるのでその判例の結論の部分だけを紹介しておきます。
相続人が死亡により相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始しその占有に所有の意思が認められる場合には、被相続人の占有が他主占有であったときにも相続人は185条にいう「新たな権原」により所有の意思をもって占有を始めたということができる。
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■ 編集後記 ■
豆知識の部分は細かいので、読んで意味が分からないという方は気にせずに飛ばしてくださいね。
ある程度、この論点の勉強をしている人でないと理解できませんので、気にする必要はありません。
今日は、すごく久しぶりに原稿を書いた気がするので、ちょっと時間がかかってしまいました。
やっぱり、間をあけると、どんなことでも感覚が鈍りますね。
それでは、次回もお楽しみに!!
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(裏編集後記)
ちょっと、いろいろと勉強したいことがあって、大学院へ行こうかなーと考えている今日このごろです。
京大の大学院に通っている先輩がいるのですが、授業は全部英語らしいのです。
周りが日本人だけじゃないから当然らしいのですが、やっぱり英語は勉強したほうがいいと心から実感しております。
英語は慣れることが大事だといいますので、無料のメルマガやテレビでこつこつやっていこうと思います。
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関連条文
・第177号 民法 第200条 占有回収の訴え 解説(20062929)
・第176号 民法 第199条 占有保全の訴え 解説(20062727)
・第174号 民法 第197条 占有の訴え 解説(20062424)
・第172号 民法 第196条 占有者による費用の償還請求(20061313)
・第171号 民法 第195条 動物の占有による権利の取得(20061313)
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