第93号 民法第112条 代理権消滅後の表見代理
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毎日3分!条文+豆知識で民法完全制覇! 第93号 2005・12・9
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■■ はじめに ■■
みなさん、おはようございます。今日は、93号です。
表見代理の説明に入っていますが、難しいので、バックナンバーを利用しながら、できれば何回も読んで自分なりに考えてみてくださいね。
自分で考えるということが法律の勉強にはとても重要です。
考えるというくせをつけてくださいね。
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▼▼▼ 第112条 ▼▼▼ (代理権消滅後の表見代理)
代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
■■ 解説 ■■
さて、表見代理は3つの類型があると説明しましたが、今日がその最後の3つめの類型です。
まず、112条の表見代理が成立するための要件を確認しておきます。
1、かつて代理権が存在したこと
2、代理行為時にその代理権が消滅していること
3、代理権が消滅したことにつき相手方が善意・無過失であること
以上の3つが112条の要件です。
では、いつもどおり具体例をあげて説明します。
Aさんは、車を買おうと思って、自分で買いに行く時間がないので、車を買う代理権をBさんに与えました。
しかし、その後、Bさんも忙しくて車を買いに行く時間がなくなったので、その代理権が取消されました。
にもかかわらず、Bさんは、Aの代理人として、Cさんから車を買いました。
という事例の場合どうなるでしょう?
本人A、代理人B、相手方Cということになります。
この場合、BさんがCさんと車の売買契約を締結したときには、Bさんに代理権がないのですから、無効となり、無権代理になります。
これが原則です。
しかし、そうすると、以前にBさんは代理権を有していたんだから、今も代理権があるだろうと思ってBさんと契約をしたCさんがかわいそうです。
取引の安全があまりにも害されることになります。
以前に、代理権を持っていた人であれば、今も代理権があるだろうと思うのは、普通ですよね。
ですから、代理権が消滅しているということを過失なく知らなかった場合(善意・無過失)には、112条の表権代理が成立して、契約は有効になり、相手方は保護されることにしたのです。
これが、112条の表見代理です。
それから、表見代理が成立すると、代理権があったということになりますので、契約は有効になります。
つまり、本来なら代理権がないのだから、契約は無効であり表見代理になるはずですよね。
これが、原則です。
しかし、表見代理が成立する場合には、例外として有権代理として扱われることになり有効になるのです。
この原則と例外ということをしっかりと意識してください。
代理権がないのですから、契約は無効になるのが原則なのです。
ただし、相手方がかわいそうだから保護しなければならない、つまり取引の安全を守る必要がある場合に、例外的に表見代理が成立して契約が有効になるのです。
よくわからない方は、バックナンバーの99条あたりをもう一度確認しておいてくださいね。
■■ 豆知識 ■■
今日の豆知識もほんとに難しいので、読み飛ばしていただいてもかまいません。
ただ、いつものごとく法律系の資格試験には出題されますので、資格試験に挑戦する方は必ず覚えておいてください。
代理というのは2種類あったのを覚えているでしょうか?
そうです。任意代理と法定代理ですよね。
では、表見代理は任意代理でも法定代理でもどちらでも成立するのでしょうか?
実は、どちらでも成立するわけではありません。
表見代理は109条、110条、112条の3類型があるのですが、任意代理の場合は全ての場合に適用されます。
他方、法定代理の場合は、109条には適用されません。
つまり、法定代理の場合には、109条の表見代理が成立しないのです。
これは、理由を考えると分かるのですが、109条というのは、授権表示による表見代理でしたよね。
つまり、本人が代理権なんて与えていないのに、与えたといった場合にそれを信用した相手を保護するための規定です。
しかし、法定代理というのは名前のとおり、法律上、当然に与えられる代理権で、本人が代理人に対して自由にに代理権を与えるなんてことはできないのです。
ということは、本人が代理権を与えたなんて言っていたとしても、それには何の意味もないわけです。
ですから、相手がそれを信用するなんてことがあり得ないわけですから、そんな相手を保護する必要はないということになるからです。
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■ 編集後記 ■
どうでしょうか?
代理のあたりから、突然難しくなってきたと思われている方が多いと思います。
民法はほんとに難しいです。ですから、これを少しずつでも理解していくことができれば後の法律を理解するのも楽になります。
ですから、頑張ってください。
それから、一応表見代理の3つの類型の説明は終わったのですが、実はまだ別の類型があります。
というのも、今まで説明してきた、3つの類型が重なり合う場合があるのです。
柔道でいう合わせ一本のような感じです。
まぁ、それは次回に説明したいと思います。
難しいと思っている方も気にしないでくださいね。難しくて当然です。
すぐに理解するなんてことは不可能です。
少しずつ、こつこつ理解していければいいだけですので、安心してくださいね。
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